第十一話 激戦川中島その六
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「やらせるか!」
「毘沙門天の力今ここで!」
「御主等に見せようぞ!」
黒い軍勢もだ。果敢に戦う。兵力では劣勢になってもだ。それでも彼等は果敢に戦いだ。互角の勝負を見せているのだった。
謙信は信玄と対峙しながらもだ。このことを悟った。そしてだった。
「この勝負、預けることになりますね」
「うむ、そうだな」
「甲斐の虎、我が強敵よ」
信玄をだ。見据えての言葉である。
「また会いましょう」
「そうだな、また会おう」
信玄も言った。
「そしてその時にはまた」
「剣を交えるとしましょう」
「最後に勝利を治めるのは」
「はい、それは」
二人同時にだった。言った。
「わしだ」
「私です」
言葉が重なったのを見てだ。お互いに笑い合い。そうしてであった。
「ではまた」
「会おうぞ」
謙信は信玄に別れを告げて本陣から去ったのだった。
そしてだ。己の軍に戻りだった。
「殿!」
「帰って来られましたか」
「そして信玄めは」
「見事な者です」
微笑んでだ。そのうえで家臣達に告げたのだった。
「まさにです。私の相手にです」
「相応しいと」
「そうした者ですか」
「はい」
その通りだというのであった。
「ですから。再び会ったその時にです」
「雌雄を決する」
「そうされますか」
「はい、それではです」
ここで、であった。謙信は全軍を見据えた。するとであった。
二十五人の男達がだ。彼の前に集った。彼等こそはだ。
「上杉二十五将、ここに」
「参りました」
「はい」
まずはだ。ここで彼等を見渡す。
いずれも只者ではないことを窺わせる顔である。しかしその全ての目がだ。一途に謙信を見ていた。主と同じ純粋な目でだ。
謙信はその彼等を見てだ。告げた。
「この戦いはこれまでとします」
「はい、それでは」
「後詰は」
「直江」
あの若武者に声をかけたのであった。
「それは貴方にお任せします」
「有り難き幸せ。それでは」
「甲斐の若武者と剣を交えたそうですね」
謙信は直江に対してこのことを尋ねた。
「如何でした、彼は」
「見事です」
直江は幸村をしてこう評した。
「あれだけの若武者がいるとは。武田は侮れません」
「そうですか。では貴方もですね」
「私も」
「はい、己に相応しい敵を見つけたのです」
そうだというのだった。
「己に相応しい敵は出会うことが非常に難しいもの」
「そうなのですか」
「そう、それは友と同じ」
「友とですか」
「その通りです、貴方は今そのかけがえのない相手と出会えたのです」
こう直江に話すのだった。
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