第百十話 切支丹その三
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「そもそも異端でもそれを正せばよい」
「それだけですな」
「魔女にしてもじゃ」
「そうしたことは厳密に調べてからですな」
「うむ、それからじゃ」
信長はまた小寺に答える。
「魔女かどうか調べ」
「しかも」
「それが人の役に立つものならよい」
信長は魔術を信じてはいない。しかしそれでもそれが人の役に立つのなら一行に構わないというのである。
「魔術、妖術なり仙術じゃな」
「そうした類の術ですな」
「実際に見てみたいものじゃが実際にあるとしてもじゃ」
「白魔術と黒魔術があるな」
「はい」
小寺はこの違いも知っていた。
「錬金術というものもあります」
「それにしてもじゃ」
「やはり人の役に立つのなら」
「それならそれでよい」
そうしたものなら一行に構わないというのだ。
「害を為すものだとはっきりわかってこそじゃ」
「その時にですな」
「処罰すればよい。しかもその責めは何じゃ」
信長は異端審問の際の責めについても言った。
「明らかに惨たらしく殺すことを楽しんでおるではないか」
「しかも責める者は相手の銭なり何なりを全て手に入れられます」
「罪のない者を陥れる者が横行するわ」
信長はすぐに言った。
「国は必ず滅ぶ」
「しかも老いた者も幼子も火にかけます」
「おぞましい話じゃ」
信長は責めやそうしたことにさえ言う。
「尚且つ法皇もか」
「はい、そうしております」
政、ただし己の為だけのそれに溺れ悪行を繰り返しているというのだ。
「多くの法皇達が」
「比叡山の者達も他の宗派は攻めてもそこまではせぬ」
異端として皆殺し、関係のない者まで巻き込んでそうしたことをしたことは一切なかった、その比叡山でもだ。
「ましてや魔女狩りなぞはじゃ」
「想像もできないかと」
「比叡山の坊主達が聞いたら腰を抜かすわ」
そこまでの話だというのだ。
「有り得ぬわ」
「その通りですな」
「向こうの坊主達は本朝の者達よりもおぞましいのう」
「だからこそです」
「うむ、気をつける」
切支丹である小寺の言葉だからこそ余計に説得力があった。
信長も頷きこう言うのだった。
「前から坊主の話は奇麗ごとではあるがじゃ」
「それでもですな」
「口では、ですが」
「実は汚いことをしておる坊主も多い」
小寺と小西に言うその坊主こそ延暦寺に多くいる坊主達だ。無論その他の宗派の坊主達もまたそういう輩はいる。
「それで坊主の言うことはあまり信じなかったがのう」
「耶蘇教もまた然りです」
「しかも本朝の比ではない腐りぶりじゃ」
「その様です」
「逆にこうも思ってしまうのう」
信長は腕を組みその顔で話した。
「どうしてここまで腐れるかとな」
「そうですな。堺に来ている神父の方
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