第百十話 切支丹その一
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第百十話 切支丹
信長はまずは小西、そして小寺と会っていた。そのうえで二人から所謂切支丹について話を伺っていたのである。
彼はまず小寺を見てこう言った。
「まさか切支丹だったとはのう」
「最初にお会いした時にお話していましたが」
「その時に驚いたのじゃ」
話はその時のものだったというのだ。
「まさかそうだったとはのう」
「色々と思うところがありまして」
小寺は信長の前に畏まったまま述べる。
「それで入信しました」
「確か洗礼と言ったのう」
「はい、それを受けました」
「向こうの坊主からそれを受けたのか」
「左様です」
「司教になるか、神父になるか」
「それがしが受けたのは司教殿です」
小寺はこう答える。
「その方からお受けしました」
「フロイスではないな」
「フロイス殿とは先日はじめてお会いしました」
信長がはじめてフロイスと会ったその時だというのだ。
「あの方より前に堺に入られた方でして」
「その司教から洗礼とやらを受けてか」
「切支丹になりました」
小寺はこう信長に答える。
「そうなった次第です」
「左様か」
「それがしも堺の教会の司教殿からです」
小西もまた信長に話す。
「洗礼を受けまして」
「そしてじゃな」
「はい、今に至ります」
切支丹となったというのだ。
小西はこのことを話しながらその首のところからあるものを取り出して信長に見せた。それは何かというと。
「これがその証です」
「十字架じゃな」
「何度か御覧になられていると思いますが」
「あちらの坊主は誰でも胸に下げておる」
それで信長も見て知っているのだ。
「金や銀だったりするのう」
「これは金ですが」
金でできた十字架にはあの髭の男がいる。十字架にかけられていながらもその表情は穏やかなものさえある。
小西はその男を見せながら信長に言うのである。
「主のお心は金よりも遥かに尊い」
「そう言われておるな」
「キリスト教においては」
「聖書というものがあるな」
信長は小西に対してさらに問うた。
「あちらの経典らしいな」
「とはいっても経とはまた違いまして」
「ふむ、どんなものじゃ」
「明日にでも明の言葉で書かれた聖書を殿にお渡しして宜しいでしょうか」
「頼む。明の言葉ならわかる」
日々古典に親しんでいるせいでそれは大丈夫なのだ。
「それではのう」
「はい、さすれば明日にでも」
「して切支丹の者じゃが」
信長は話をこの場での本題に進めた。
「どの者、どうした理由であっても他の宗派を攻める者は用いぬどころか領内から追い出す」
「では神社仏閣への攻撃は」
「絶対に許さぬ」
信長は小寺にはっきりと答えた。
「
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