第百九話 尾張者達その二
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「堺の商人の倅か」
「ふむ、小西と申すか」
「それに尾張からは加藤が二人もおるぞ」
「福島というのか」
「片桐か」
「脇坂と申すか」
とかく多い。そうした者が一葉に信長の前に集められたのだ。
信長はその彼等を一瞥した。そのうえでだった。
まずは柴田や佐久間を置き馬に乗せて走らせ弓や槍を見る。無論刀もだ。
学問の知識も利休や林、平手を傍に置いたうえで調べる。政については丹羽や村井、松井達と共に見た。
そうしてかなり慎重に見る、それは一日ではなかった。
一週間かけた。政をしながらだがその彼を見て家臣達は言うのだった。
「また慎重な」
「一人の者を何度も見られておる」
「そこまで見られるとは」
「我等の時もそうだったが」
「ううむ、殿は人をよく見られる」
「全くですな」
こう言って信長の慎重な人の見方に感嘆さえ覚える、そのことに彼等も唸る顔になっているのだ。
しかし信長はしかと見た。そのうえで遂にこう言った。
「皆用いるぞ」
「殿の前に出た者全てをですか」
「用いられますか」
「全て見極めた」
全員そうしたというのだ。
「どの者もそれぞれ芸を持っておる」
「何かしらの芸があればですか」
「用いられるのですか」
「何か芸があればまずそこから使う」
一芸、それに秀でていればというのだ。
「してそれからじゃ」
「慣れてからですな」
「そのうえで」
「そうじゃ。慣れさせそのうえで他の仕事もやらせる」
得意とするもの以外もだというのだ。
「政なり兵法なりな」
「それでさらに育てられ」
「そうしてでございますか」
「殿はそうされて」
「皆用いられますか」
「何日も見て耳極めさせてもらった」
信長は満足してさえいる。
「武芸に秀でた者もおれば政に秀でた者もおる」
「ではわしの倅は」
蜂須賀がここで信長に問う。
「何にして頂けますか」
「まずは戦の場に出てもらう」
そうするというのだ。
「それがなければ鍛錬じゃ」
「左様ですか」
「何もすることがなければ政をしてもらう」
予定を変えてそうすることも考えているというのだ。
「一芸を育てることも大事じゃがな」
「政ですか」
「それもですか」
「そうする。まずは政じゃ」
国を治めることを念頭に置いている信長にとって戦場に出ることよりもまずは政だった。それをしてこそなのだ。
「とはいっても大抵の者が政もわかっておるわ」
「では倅も」
「うむ、働いてもらうぞ」
信長は微笑んで蜂須賀に告げる。
「是非な」
「有り難きお言葉。それでは」
蜂須賀の子も用いられることになった。無論細川、黒田の子もそうであり他の者達もだった。織田家はまた新たな優れた者達を多く召抱えることになった。
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