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戦国異伝
第百八話 茶の湯の南蛮人その十一
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「うむ」
 そのことは間違いないというのだ。
「その教義も隅から隅まで読んでもじゃ」
「邪なところはありませんな」
「全くな」
「真言宗は祈り曼荼羅等を用いますが生贄等の左道とは決して用いませぬ」
「そもそも弓削の道鏡もそうした術は使わなかった」 
 信長は道鏡についても正しく知っていた。俗に天下に名を残す妖僧であるがだ。
「生贄は左道の最たるものじゃな」
「全くです」
「近衛殿は左道をことの他嫌われた」
 信長もそのことを見ていて近衛のその本質を見抜いていたのだ。
「よき方じゃな」
「ですな」
「邪法を用いてまで何かをする御仁ではない」
「人を殺めてまでは」
「そもそも公卿の世界では陰謀は用いても命は奪わぬ」
 平安時代は政争に終始したが流されることが限度であり命を奪われるということはなかったのだ。
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