第百八話 茶の湯の南蛮人その十
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「難攻不落かと」
「そこまで至るというのじゃな」
「あれはまことに寺ですか」
「南蛮にはああした寺はあるか」
「教会ではありません」
フロイスはキリスト教に置き換えてそのうえで信長に答えた。
「修道院でもあれ程までは」
「ないか」
「欧州での城は町を壁で囲むものです」
「話に聞けば明もそうであるな」
「あの国も古来よりそうらしいですね」
欧州や明の城は日本のものとは全く違っている、町で壁を囲んだものだ。信長は日本にあるそうした城ではこの城を知っていた。
「小田原城の様なものじゃな」
「東にある城ですね」
「あの城は町を壁と堀、石垣で囲んでおるそうじゃ」
「はい、まさにそうした城が欧州の城です」
「しかしそれでもか」
「都も確かにそうした城ですが」
形式的なものでしかない。平安京にしても平城京にしてもその壁は低く門も守るには頼りないものである。だからフロイスも都等はそれに入れなかった。
「しかしあの寺は」
「全く違うな」
「町どころではないかと」
その中にあるのはというのだ。
「あれが寺ですか」
「そうじゃ」
「あれだけの城だと相当な数の兵が入ることができますね」
「それだけではない、鉄砲もかなりの数じゃ」
無論兵糧も塩も多くある。
「川に囲まれており水にも困らぬ」
「そしてその水がまた寺を護るのですね」
「壁も石垣も見事なものじゃしな」
「あれが一向宗、本願寺の拠点ですね」
「その一向宗達の数が半端ではない」
信長は彼等に対してこれ以上はないまでの警戒も見せていた。
「しかも命を恐れぬからのう」
「しかしその一向宗にですか」
「うむ、何十倍の命知らずの者達と戦い勝ったのじゃ」
「相当な方なのですね」
「戦をして勝つことは容易ではない」
信長は宗滴の力量を見ていた。そのうえでの言葉だった。
「だから朝倉も油断できぬわ」
「やがてあの家とも戦を」
「せぬに越したことはないがな」
だがそうした状況になればだというのだ。
「しかしやるからには勝つつもりじゃ」
「ですか」
「うむ。さて、話はこれ位にしてじゃ」
信長は真剣な顔から笑みになり述べた。
「菓子も食うとするか」
「その菓子ですが」
利休は菓子についても言ってきた。
「本日は堺から面白い菓子を取り寄せました」
「ふむ。どんな菓子じゃ」
「南蛮の菓子です」
それだというのだ。
「南蛮の小麦を使った菓子ですが」
「小麦とな」
「何でもカステラというそうです」
「あれですか」
フロイスがカステラと聞いて嬉しそうに声をあげた。
「あれが日本でも食べられるとは」
「カステラのことを知っておるのか」
「ふわふわとした柔らかさと甘さを持つ菓子でして」
「ふむ。それは美味そ
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