第百八話 茶の湯の南蛮人その七
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「それじゃな」
「はい、大名や国人でもままにしていますが」
「先の武田の主じゃな」
信玄の父信虎のことである。あまりにも粗暴で人をないがしろにする行いが多かった為彼が疎んじていた嫡子信玄にも彼が可愛がっていた筈の信玄の弟信繁にも甲斐を出た隙に出入り禁止となり追い出されている。
「今は何処におったかのう」
「この都にひそかに」
住んでいるというのだ。
「そうなっているとか」
「無残よのう。名門武田の主でありながら」
「むしろ暴政の結果としてはましかと」
「それもそうじゃな。異朝ではそうした皇帝や王はより酷い結末になっておる」
「煬帝がそれです」
とかくこの皇帝の名前はよく出た。
「暴政の結果ああなりました」
「頼みとする筈の臣下の者達や兵達に背かれてな」
「そして殺されました」
臣下、兵達に囲まれ彼等に布で首を絞められ死んだ。皇帝ならば毒酒を飲み自ら死ぬものだがそれすら適わなかったのだ。
利休は煬帝のその末路を信長に話す。信長もそれを聞いて言うのだった。
「わしは決してな」
「煬帝にはなりませぬな」
「次の唐なら太宗よりも玄宗が好きじゃがな」
「しかしあの皇帝も」
「ははは、わかっておる」
玄宗を出してもそれでもだと笑って利休に返す。
「楊貴妃には溺れぬわ」
「そうして下さいませ」
「玄宗は嫌いではないがああなってもいかん」
そうだというのだ。
「なるなら宋の太祖じゃな」
「そうですか。あの皇帝の様になられますか」
「わしはわしじゃがそれでもああした様になりたい」
「信長様の一つの理想ですか」
「そうなるな。さて、それでは」
利休との話が一段落したところで近衛達とフロイスを見て述べた。
「今から利休の茶を」
「五人で飲めというのでおじゃるな」
「それでお願いできるでしょうか」
近衛に対して慎んだ態度で述べる。
「今より」
「織田殿のお願いならば」
近衛はいつもの気取りを取り戻して信長に応えた。
「それにこのフロイス殿とお話してみると」
「この者如何でござろうか」
「よき御仁ですな」
こう言った近衛だった。
「実に」
「そうですな。よき者ならば」
「茶も共に飲み」
「はい、互いに心を通わせましょうぞ」
「それでは山科殿」
近衛は信長の言葉に頷きそれからだった。
山科にも顔を向ける。そのうえでこう彼に言った。
「この度は」
「畏まりました」
山科も微笑んで頷く。そうしてフロイスと共に利休の淹れた茶を飲むのだった。
無論信長も一緒だ。彼はその茶を飲みながら二人の公暁達に述べた。
「して皇居ですが」
「何でおじゃろうか」
「壁も宮もかなり傷んでおります故」
それでだというのだ。
「修繕をさせて頂いて宜しいでしょう
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