第百八話 茶の湯の南蛮人その三
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「そして座り方ですが」
「正座じゃな」
「これはどうも」
フロイスは信長の前で正座をしようとする。だが、だった。
どうしても上手くできない。足を折り畳もうにもそれができず座った姿勢で崩れそうになる。信長はそのフロイスにこう言った。
「ああ、よい」
「正座をしなくてもですか」
「そう無理をしなくてもよい」
フロイスの苦しそうな顔を見て微笑んで言う。
「それはな」
「そうされずともですか」
「そうじゃ、よい」
「では」
フロイスも信長の言葉を受けて足を崩そうとした。しかしここでその崩そうとしたところでまた正座をしようと務め言った。
「やはりここは」
「正座をするのか」
「はい、そうします」
こう信長に答える。
「やはりその方がいいと思いまして」
「わしや利休がそうするからか」
「はい」
それでだというのだ。
「それがし一人だけというのは失礼ですから」
「ふむ。そう思ってか」
「左様です。そうさせてもらいます」
「真面目じゃな」
信長はフロイスのそうした性格にも気付いて言う。
「御主は」
「真面目といいますか」
「わし等がそうしているならか」
「そうしなければならないのが礼儀と思いなおしたので」
それで考えをあらためて正座に戻るというのだ。
「そうさせてもらいます」
「わかった。御主がそう決めたのならじゃ」
信長も確かな声でフロイスに告げる。
「そうせよ」
「はい、それでは」
フロイスも頷く。そうした話をしてだった。
フロイスは何とか正座をした。フロイスは顔に脂汗すら流しているがその彼に利休がこう言ってきた。
「正座も常にしているとです」
「苦しくならないのですか」
「足が慣れます」
それで苦しくならないというのだ。
「本朝では誰もがこうして座りますので」
「信長様も利休殿もですか」
「はい、苦しくなりませぬ」
「足が痺れることもですな」
「はい、ありませぬ」
正座で最も苦しくなるそれもないというのだ。
「慣れるからです」
「これに慣れるとはとても」
「誰もが最初はそうですが」
「それでもですか」
「フロイス殿も毎日していれば慣れますので」
「利休殿がそう仰るのなら」
「続けるとやがて実ります」
利休は穏やかな声で語る。
「例えどの様なことでも」
「そうですね。それはわかります」
「それではです」
利休は今のフロイスの言葉を受けさらに言った。
「これからさらにご精進下さい」
「そうさせて頂きます」
信長は今は二人の話を聞くだけだった。そのうえで近衛と山科が来るのを待っていた。やがてその時が来た。
近衛と山科もその狭い入り口を潜った。するとすぐにこう言った。
「何と、まさか」
「噂の御仁までいるとは
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