第百八話 茶の湯の南蛮人その二
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「そうじゃな」
「左様です。願わくば」
「茶を極めたいか」
「それをお許し頂きたいのですが」
「ふむ。ではじゃ」
信長は利休の申し出を聞きこう述べた。
「御主にそれを許す。しかしのう」
「しかしとは」
「欲が強いのう」
信長は楽しげな笑みで利休を見て言った。
「実にな」
「確かに。それがしは欲が強うございます」
「茶を極めたいとはな」
「果てしない上を目指したいのです」
「天下か」
信長はこの言葉も話に出した。
「それを目指すか」
「殿の天下ではありませぬが」
それでもだというのだ。
「それがしもまた」
「天下を目指すか」
「はい、道という天下を」
利休はまた信長に話した。
「それを目指します」
「わしが目指す天下はわかっておるな」
「はい」
この国を統一し平安楽土を築くことだ。信長が見ている天下はそれであり利休の天下はどうかというのである。
「そして私の天下も」
「わしは御主の天下には何の邪魔もせぬ」
「お許し頂けますか」
「何故邪魔をせねばならん」
かえって笑ってこう問い返す信長だった。
「わしの天下と御主の天下は違う以前にじゃ」
「それ以前のことですか」
「御主の天下は必ず人を導く」
茶の道、それはそうなるというのだ。
「そして人をよい思いにさせるではないか」
「それがしが何故茶の道を極め人に広めたいかといいますと」
「それがよいことと思うからじゃな」
「茶の道は荒んだ心を落ち着かせそして風流や礼節を教えてくれます」
利休が教えるのではなかった。人が教えるのではなく茶、その道が教えてくれるというのだ。利休はこう信長に語る。
「ですから」
「それ故にか」
「はい、それがしの天下を目指します」
「政とはまた別のこの天下は」
どういった天下か、信長はこう評した。
「茶、違うな」
「では何の天下だと思われますか」
「道か」
信長は利休が目指す天下をそれだと言った。
「それになるな」
「そうですな。それがしの天下はそれです」
「道の天下であろう」
「殿の天下は国の天下であり」
「御主の天下は道の天下となる」
二人でそれぞれの天下を確かめ合う。そうした話をしてだった。
二人はまずはフロイスを待った。やがてフロイスは狭い入り口を潜って茶室に入って来たがここでこう言ったのである。
「あの、この部屋ですが」
「茶室に入ったのははじめてではあるまい」
「利休殿に教えて頂きました」
その利休に顔を向けて信長に答える。
「お茶のことも茶室のことも。ですが」
「それでもか」
「はい、こうしたものもあるのですね」
フロイスは狭いその茶室の中を見回しながらそのうえで言う。
「この国には」
「意外じゃったか」
「思いも
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