第百八話 茶の湯の南蛮人その一
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第百八話 茶の湯の南蛮人
信長は六波羅の茶室に近衛と山科を招いた。
そこには既に利休がいる。彼は狭い茶室の中で利休に顔を向けてこう問うた。
「昨日フロイスに会ったな」
「はい」
「それでどうじゃった」
「澄んだ方ですな」
利休の返事はここからだった。
「しかも心の広い方です」
「そうした者だというのじゃな」
「はい、何よりも御心が強いです」
意志が強いというのだ。
「だからこそ遠い南蛮から本朝に参ったのでしょう」
「そうじゃな。そしてそのフロイスじゃが」
「茶のことはお教えさせて頂きました」
それはもう既にだというのだ。
「非常に飲み込みの速い方でもありました」
「頭もよいのじゃな」
「お心だけでなく」
頭も併せ持っているというのだ。
「ですから茶のこともです」
「頭に入れたか」
「さしあたっての作法に問題はないかと」
「ならいいがのう。さて、フロイスが先になるのか」
「そうですな。おそらくは」
利休も彼が先になると読んでいた。そのうえでの言葉である。
「あの方の方が先になるかと」
「フロイスの方がじゃな」
「はい。そしてです」
「そしてか」
「それがよいかと」
フロイスが先になる、それがだというのだ。
「この場合は。それではです」
「茶の用意はできておるな」
「必要なだけは」
後は茶の席がはじまってから淹れるだけだというのだ。
「それで終わりです」
「そうjか」
「ですから安心してお待ち下さい」
「わかった。して利休」
信長は利休本ににも問うた。
「これからのことじゃが」
「何でしょうか」
「御主は石高は欲しくはないか」
「それがしがですか」
「そうじゃ。御主は茶だけではなく」
利休の学識もかなりのものだ。古今の古典に通じており今の戦国の世のこともよく見て理解しているのだ。
「政のことにも確かな見識があるからな」
「だからですか」
「どうじゃ。禄はいらぬか」
「利休のその大柄な身体と顔立ちも見る。
一見何でもなさそうだがその身体つきは逞しい。しかも腕も太くただの茶人とは思えないだけの風格があった。
信長はその彼に言うのだ。
「戦場で戦をするだけが身を立てることではない」
「では茶も」
「そうじゃ。どうじゃ」
あらためて利休に問う。
「禄はいらんか
「実は」
ここでこうも言う利休だった。
「それがしはあまり」
「田畑にいはないか」
「既に糧には困っておりませぬ」
堺の豪商の一つだ。それなら困る筈がない。
「ですからそのお気遣いでけということで」
「領土はいらぬか」
「しかしです」
「しかし?」
「その他のものを」
「茶か」
信長は勘からこう察して述
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