第百七話 地球儀その十
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「当然かと」
「当然だというのか」
「はい、あのお二人は公卿の方々の中でも別格です」
「それはわしも知っておるぞ」
義昭はその甲高い声で答える。
「得に近衛殿はじゃ」
「五摂家の筆頭近衛家の主ですから」
「まさに別格じゃ。しかしそのお二人をじゃ」
「茶の席においてです」
まさにそこでだというのだ。
「その南蛮の僧侶とです」
「そんなことは信長がせずともよいと思うがのう」
「ではどなたが為されるべきだと」
「普通に会ってよいのではないか?」
これが義昭の考えだった。
「都の何処かの寺でな」
「そこでだというのですか」
「そうじゃ。本能寺でも何処でもじゃ」
「ですが切支丹は他の寺社には入られませぬ」
「そうなのか」
「ですからそれは」
他の寺社の中でお互いに会うことはできないというのだ。細川はこのことを知っているが義昭は知らない。
「できませぬ」
「だから茶の場を設けてか」
「そのうえで、です」
「難儀なことじゃのう。しかも信長も同席とは」
「それもまたです」
「またか」
「はい、織田殿のお考えあってのことです」
細川は信長の考えがわかっていた。しかし義昭はこのこともわかっておらず素っ頓狂な感じの顔のままだった。
そしてその顔でこうも言う。
「まあ信長がそうしたいのならじゃ」
「それでよいと」
「わしがあれこれと言うことではない」
こう言ったのである。
「だからよいわ」
「左様ですか」
「うむ。信長がそうしたいのならそれでよい」
あくまで信長に任せる。ただし何もわかってはいない。
「ではこのことはそれでよしとしようぞ」
「そうされますか」
「信長もわしがいちいち口を出しては迷惑じゃろう」
今度は余裕の笑みを見せるがその余裕が根拠のないものであることは彼だけが知らないことだった。
「ではじゃ」
「このことはこれで、ですか」
「言わぬ」
義昭は細川に笑って答えた。
「信長の好きな様にすればよかろう」
「ですか」
「さて、二条城が完成すればじゃ」
義昭の頭の中にあるのは今はこのことだけだった。とにかくそこに入りそこから己の威厳を示そうと考えていたのだ。
そのことだけを考えこう言うのである。
「早速入ろうぞ」
「完成は近いですから」
「うむ、ではじゃ」
義昭は笑って言っていく。
「今は宴を楽しもうぞ」
「酒ですが」
「信長が献上してきたものがあるな」
「肴もです」
それも信長が献上していた。今幕府にあるものはとにかく織田家からきたものばかりといった状況なのだ。
細川はそこに見ているものがあったが義昭は見ていない。それで二条城に対してもこうも言うのだった。
「信長は将軍に相応しい城を築いているな」
「常にご自身で細
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