第百七話 地球儀その四
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「確か」
「その上皇様が出家されてじゃ」
「法皇となられるのですね」
「それが本朝じゃ」
信長はフロイスに話しながら日本と南蛮ではかなりのことが違うことも理解した。
そのことを頭の中で踏まえながらこうも言うのだった。
「それでその法皇というのが」
「私達を導かれています」
「その御仁がこの足のところにおるのか」
「左側の丁度真ん中に」
ローマの場所をこう表現する。
「そこにおられます」
「左様か」
「はい、そうです」
フロイスは話していく。
「そこにおられます」
「成程のう」
「この国で言うなら延暦寺や本願寺の法主でしょうか」
フロイスは信長にもわかりやすく話そうと思いこう表現した。
「そうなるでしょうか」
「ああしたものか」
「とはいっても我等、ローマ=カトリック教会の大きさはかなりのものでして」
「延暦寺や本願寺よりもか」
「はい、それだけの大きさです」
こう信長に話す。
「欧州全土に至り明やこの国にも至っていますし」
「ふむ。それだけの大きさか」
「左様です」
フロイスは信長に話していく。
「それがローマ=カトリック教会です」
「カトリックのことも聞きたいが」
まずはそれを後回しにして信長は地球儀を見ながらフロイスに対してさらに尋ねた。
「とにかく世界は丸いか」
「そして日の周りを回っております」
「しかも日本はこれ程小さいか」
「その周りの海はあまりにも広く」
日本はその中に浮かぶ様だというのだ。
「そうした風になっております」
「どの教えでも地球は丸いとは言っておらなかったが」
「実はキリスト教もでして。あっ、私はこのことについては」
あえて言葉を濁す。カトリックの教理とは反することは神父である彼としては公では言えないことだからである。
それで言葉を濁してこう述べたのである。92
「その地球儀を御覧になられれば」
「そういうことか」
「そうです。それでこの地球儀は」
「時計はともかくとしてな」
自分ではわからないから受け取らない、しかし地球儀はだというのだ。
「これは貰ってよいか」
「是非共」
最初から贈りものとして持って来た。なら異存がある筈がなかった。
それで信長もそれをよしとして地球儀を受け取った。その上でフロイスに対してにやりと笑って述べた。
「ではじゃ」
「それではですか」
「うむ、この時計と地球儀を持ってわしの前に来た理由じゃが」
「そのことは」
「耶蘇教の布教を許して欲しいのじゃろう」
フロイスの考えは既に読んでいる、それ故の言葉だった。
「そうじゃな」
「おわかりですか」
「おおよそな。それではじゃ」
信長は余裕の笑みで一呼吸置いてからこう告げた。
「よいぞ」
「お許し頂けま
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