第百七話 地球儀その二
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彼は丁寧な口調でこう信長に言った。
「中に色々な仕掛けがありまして」
「それで動くのか」
「そうです。そうしたものです」
「では下手に動かせば壊れるか」
「そうもなります」
フロイスもその可能性を否定しない。
「そして動かなくなります」
「そうか。しかしそうして自分から動くとはのう」
「お気に召されたでしょうか」
「面白いのう」
信長は楽しげに笑ってこうフロイスに返した。
「実にな」
「ではこれを」
「いや、待て」
「?といいますと」
「先程これはからくりで動くと申したな」
「からくり?仕掛けという意味ですか?」
「ここでは同じ意味になるのう」
これは確かにそうなることだった。今この場面では仕掛けは即ちからくりという意味に他ならないものだった。
それで信長もそのことからフロイスにさらに話す。
「実際にな」
「そうですか。そういう意味ですか」
「そうじゃ。それでじゃ」
信長はそのまま献上しようとしていたフロイスに己の調子で言っていく。
「その時計は壊れると申したな」
「その通りです」
「そうじゃな。形あるものは必ず壊れる」
こう言って信長もそのことについては特に思うことはなかった。
だがその時計について今度はこんなことを言った。
「して中にからくりが多くある」
「かなり複雑ではあります」
「ではわしにわかりきることはできぬやもな」
言うのはこうしたこものだった。
「わからぬのならよい」
「この時計がどうして動くのがわからないならば」
「それがわかれば喜んで貰い受けたい」
こう言うのだった、
「それでどうじゃ」
「そうですね。では」
フロイスは信長に応えながら時計は引っ込めた。しかし彼はすぐにこうも言ってきた。
「次はです」
「その丸いものじゃな」
「はい。これはです」
「色々と書いておるのう」
「地球儀です」
「地球儀とな」
「そうです」
フロイスは信長にまた真面目に答える。
「これは私達の住んでいるその世界をこうして模型にしたもので
「世界とな」
「天下と言えばおわかりでしょうか」
「そう聞くとな。しかしじゃ」
信長はその地球儀をまんじりともせず見ている。そのうえでこう言うのだった。
「これはまたな」
「不思議なものだと思われますか」
「天下。この国は何処じゃ」
信長は己の国の場所を問うた。
「それは何処じゃ」
「信長様の国ですね
「それは何処にある」
こう問うのである。
「世界のどの辺りじゃ」
「ここです」
「ほう、大きいのう」
彼が指している北のその広大な地面を見ての話だ。
「これは」
「いえ」
「いえ?」
「信長様の国はあちらです」
「何じゃ、そこは」
フロイスが指差した方
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