第百七話 地球儀その一
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第百七話 地球儀
程なくして信長の前にフロイス達キリスト教の神父達が連れて来られる。信長は彼等の服を見てこう言う。
「ふむ。面白い服じゃな」
「これが我々の服です」
「神に仕える者の服です」
フロイスを前に置き苦労して正座をしている彼等はこう答える。
「神父の服です」
「そうじゃな。堺でも観たわ」
「既にですか」
「我等のことは御存知ですか」
「耶蘇教じゃったな」
信長は日本の呼び方で言う。
「そうじゃったな」
「はい、左様です」
「この国では耶蘇教といいます」
「それがキリスト教です」
「我等の信仰です」
「そうじゃな。それではじゃ」
信長は彼等の話を受けてさらに問う。
「御主達は何故わしのところに来た」
「そのことですか」
「どうしてここに来たかというのですか」
「そうじゃ。何故来た」
信長はフロイス達を見据えながら再び問うた。
「この都に、そしてわしの前に」
「はい、この国では単刀直入といいますな」
「そう言うとなると」
「お願いがあります」
フロイスは畏まってきた。その口調もたどたどしいものではあるが添えれでもそこには確かなものがある。
そしてその口調でこう信長に対して言った。
「この都で拭き今日をしても宜しいでしょうか」
「耶蘇教をか」
「はい、宜しいでしょうか」
「別に構わぬがな」
まずはこう返す信長だった。
「それ位のことはな」
「そぴですか。それでは」
「一つ言っておくことがある」
信長が言うこと、それはというと。
「都には寺社が多い」
「仏教やこの国独自の神を祭ったそうした教会、いえ寺院がですか」
「実に多い。しかしじゃ」
「そうしたこの国の聖職者達とは」
「揉めるでない」
このことを言う信長だった。
「よいな、それが条件じゃ」
「わかりました。それでは」
「謹んでそうさせて頂きます」
彼等も一礼して応える。話はこれで大体済んだ。
だがまだ話すべきことがあった。フロイスはここであるものを出してきた。それは何かというと。
長方形で南蛮の装飾が施された何やら中が動く白いものと青と黄色のまだら模様に見える丸いものだ。信長はその二つを見てまずは目をしばたかせた。
そしてそれからこうフロイスに問うた。
「それは何じゃ」
「はい、まずこれですが」
その長方形で長いものを手に取り信長に見せる。見ればその中の大小の針が少しずつ動いている。
「時計です」
「時計というと」
「我が国にありまして」
「ふうむ。面白いものじゃのう」
「この針と針で時がわかります」
フロイスはこう話す。
「それも確かな時が」
「ほう、確かなか」
「この国で時計といえば」
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