第百六話 二条城の普請その六
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「平手殿の小言といえば」
「怖いか」
「それがしも叱られたことがありますが」
それがどうかというのだ。
「いや、思いきり叱られました」
「そうじゃろうな」
「あそこまで叱られたのはありませぬ」
親からもなかったというのだ。
「いや、全く」
「そこまでか」
「それは権六殿も同じでは」
「今では怒られぬがな」
「わしも流石にな」
佐久間も言う。言わずと知れた織田家の武の二枚看板である。
「今はないがな」
「それでも若い頃はよく怒られたものじゃ」
「全くじゃ」
織田家の二枚看板も若かりし日は平手によく怒られたというのだ。この彼等にしてもだ。
「叱られ殴られてな」
「いや、その拳の硬いこと」
「しかも熱いしのう」
「平手殿の拳は効くわ」
「それがしあそこまで強い拳を受けたことがありまぬぞ」
前野の言葉だ。
「いや、大層痛いものでした」
「そうじゃろうな、あれは」
「気持ちはわかるわ」
これは柴田と佐久間も言う。
「戦場のどの組み合いよりもきついわ」
「あんな拳は他にないわ」
「ただ痛いだけではない」
「心が篭っておるわ」
「わしも殴られましたぞ」
真面目なことで知られる万見もだった。彼は織田家において算術やそうしたことで優れた手腕を見せている。その彼もだというのだ。
「この前織田家の力が伸びたことで武田や上杉なぞものの数ではないと言うと」
「平手殿にか」
「殴られたか」
「はい、油断するとは何事かと」
こう言われて殴られたというのだ。
「いや、これがまたやはり」
「痛かったか」
「そうであったか」
「実に」
そうだったというのだ。
「あんなものがあるのですな」
「まあのう。平手殿の若き日はな」
「それこそ熊も一睨みだったそうじゃ」
「何と、熊もですか」
「うむ、すごすごと立ち去るまでな」
「凄まじい気迫だったそうじゃ」
それがかつての平手だったというのだ。
これには万見も驚く。それでこう言うのだった。
「ううむ、熊までとは」
「戦の場でも大殿を常に助けておられたらしいしな」
「その武勇で幾度もお救いしたらしい」
「さながら慶次や才蔵の様だったらしい」
「かなりの武辺者だったそうじゃ」
「それでなのですな」
万見も柴田と佐久間の話を聞いて頷く。織田家の武の二枚看板の言葉はここでは特に重みがある。それで言うのだった。
「どうやらあの方に勝てるのは」
「拳では今もおらぬだろうな」
「織田家においてはな」
「凄い方ですな、全く」
平手の凄さがあらためて知られていた。そうした話をしながら都に入り早速だった。
信長は主な家臣達を連れ義昭に拝謁する。義昭はその信長にこう言うのだった。
「今回は早いのう」
「左様で
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