第百六話 二条城の普請その一
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第百六話 二条城の普請
信長は義昭に言われ岐阜から都に向かっていた。主立った家臣達を連れているのも義昭の要請だ。そして今度はだった。
「今度の留守は信包様と信興様にされましたが」
「それが何かあるか」
信長は己の横から言ってきた平手に応えた。今一同は共に馬で進んでいる。
道は見事に整えられている。全て信長の施政からそうなった。
その道を馬で進みながら信長は平手の言葉に応えていた。
「勘十郎は都に張り付いておる」
「六波羅にですな」
織田家において平手と交代で留守役を務めていた彼が都にいてそして平手が共に来ているならそれならばだというのだ。
「だからですか」
「そうじゃ。しかもじゃ」
「しかも?」
「留守役をさせるのも教えることの一つじゃ」
それであるというのだ。
「三十郎と彦九郎ももうすぐ家の将になるしな」
「だからこそですか」
「それに政もしてもらう」
それもだというのだ。
「だからこそじゃ。留守役もさせてじゃ」
「学んでもらいますか」
「留守役はやることが多い」
実質的に信長の名代として彼がいない間の城の中のことや政のことを取り仕切らねばならない。その為信長は今までは彼が信頼し仕置きを任せられる信行か平手に任せていたのだ。だがそれをだというのだ。
「勘十郎は都に置きたい。それに爺もじゃ」
「それがしもといいますと」
「もう歳じゃ。何時ぽっくりいくかわからぬ」
信長は今の言葉は悪戯っぽく笑って述べた。
「代わりを探さねばのう。今のうちに」
「仰いますな。それがしまだまだ健在ですぞ」
平手には冗談は通じない。主の今の言葉にもすぐにむっとした顔になってこう返す。
「背筋もしっかりしております。まだまだ若い者には」
「ははは、では何歳まで生きるつもりじゃ」
「殿の天下統一を見るまでは」
それまでは絶対に生きる、平手は強い決意を見せて述べた。
「そうしますので」
「やれやれ。では当分生きるか」
「そのつもりですので」
「全く。しぶといのう」
「殿、何ですかそのお言葉は」
いつもの調子で返す平手だった。
「殿、それがしが生きようというのはです」
「織田家の為じゃというのじゃろう」
「そして殿の為です」
その信長を見ての言葉だった。
「そして殿に何かあれば」
「こうして言うというのじゃな」
「あえて言わせて頂きます」
とかく口五月蝿い。少なくともそこには老いはいい意味で見られない。
「これもまた織田家の為、殿の御為にです」
「やれやれじゃな。口は衰えぬのう」
「武芸もですぞ。これでもまだまだ若い者には負けませぬ」
「年寄りの冷や水となるぞ」
またこんなことを言う信長だった。平手に対してやれや
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