第百五話 岐阜に戻りその十六
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羽柴もここまで聞いて唸る。そしてその幸村についてこんなことを言った。
「ではその者は天下一の武士でしょうか」
「ほう、そう言うか」
「話を聞く限りは」
幸村の話を聞いたうえでの言葉だった。
「そう思いますが」
「そうじゃな。あれだけの者は織田家にもおらぬ」
信長も袖の中で腕を組み言う。
「あの者もおるからじゃ」
「徳川殿でもですか」
「一万では勝てぬ」
それだけの軍勢ではというのだ。
「とてもな」
「ですか」
「織田の軍勢でもまともにぶつかって同じ数ならばじゃ」
それでだというのだ。
「とてもじゃ」
「勝てませぬか」
「城でも篭らん限りはな」
これが答えだった。
「しかし堅固な城ならばじゃ」
「例え武田の幾万の兵に囲まれようとも」
「陥ちぬからな」
だから岐阜城をより堅固なものとするというのだ。さらにだった。
「そして一旦急あればすぐにあちこちから兵を集められる様にしておく」
「道はその為にも」
「道は人の行き来の為にあるものじゃ」
無論そこには軍勢も入るというのだ。信長はそうしたことまで念頭に入れてそのうえで政を行なっているのである。
それ故に道も敷くというのだ。それこそ。
「都が軸になるがな」
「岐阜もですか」
「うむ、全ての国をつなげる」
そうするというのだ。
「そしてそのうえでじゃ」
「軍勢の移動も容易にされますか」
「うむ、そうする」
「ですか。兵もまたですか」
「兵を動かすのは政じゃ」
信長が至った考えだ。それこそ多くの書を読みそのうえで実際にここまで至って辿り着いたものだ。それでこう言うのだった。
「だからじゃ。よいな」
「はい、それでは」
「岐阜城をより堅固にしそのうえで」
さらにだった。
「援軍はすぐに城に来られる様にするぞ」
「それでは殿」
秀長も言ってくる。
「犬山城もですな」
「岐阜城とつなげてか」
「そうされますか」
「当然じゃ。この岐阜に至るにはまずあの城じゃ」
犬山城は美濃と信濃の境にある。信濃から美濃に入るにはまずこの城を手に入れなければならないのだ。
その為この城の守りが肝心になる。秀長もそれで言うのだった。
「それ故じゃ」
「あの城もですか」
「堅固にしそのうえでじゃ」
「道もですか」
「既に敷いておるがより行き来しやすい様にしておこう」
この場合は岐阜城からだった。岐阜城と犬山城を完全につなげるというのだ。
「今のうちにあらゆることに対する様にしておくぞ」
「畏まりました」
こうした話をしていった。信長は手に入れた国々をより治め豊かにせんとしていた。その中で備えも着々と進めていくのだった。
第百五話 完
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