第百五話 岐阜に戻りその十五
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「天下人になるかどうかはともかくじゃ」
「武田は天下人にはなれませぬな」
秀長はすぐにこう述べた。
「あの御仁はあれで権威にはです」
「弱いか」
「それを崩せる方ではありませぬ」
そうだというのだ。
「幕府もです」
「幕府を倒し将軍になることもな」
「なれませぬ」
「管領じゃな」
信長は読む目になって述べた。信玄が天下に号令するとなればどの立場になるかということをだ。
「そうなるわ」
「そうなりますか」
「それが精々じゃな」
そもそも武田は甲斐源氏の嫡流だ。室町幕府の守護大名達の中でも名門として知られている。それが戦国大名になったのだ。
確かに戦国大名である。しかしその根幹はだというのだ。
「やはり源氏の名門ですので」
「権威にどうしてもな」
「そうです。逆らえないところがあります」
「管領じゃな」
「それが精一杯になりますな」
「うむ、そうなるな」
武田が若し天下を手に入れればというのだ。
信長はその話をしてからこう言った。
「兵の数では最早武田を圧倒しておる」
「上杉、北条、毛利もまた」
「それは出来ておる、しかしじゃ」
「それでもですな」
「兵の数だけで戦は勝てぬ」
確かに極めて重要な要素ではある。だが戦はそれだけではないというのだ。
「武田は強いわ」
「それ故にですな」
「岐阜はより堅固にしておく」
「それが宜しいかと」
秀長も岐阜城を固めることには反対しない。
「この城は何といっても武田へ最大の備えですから」
「ここが陥ちればな」
どうなるか、信長は強い声で述べる。
「織田家は終わりよ」
「武田は一気に雪崩れ込みますな」
「そうなれば止められぬ」
武田の軍勢をだというのだ。
「播磨まで一気に取られるぞ」
「そして四国もですな」
「甲斐の虎は恐ろしい者じゃ」
信長はよくわかっていた。信玄、そして謙信がどれだけの者か直接会ったことはないがそれでもよくわかっていた。
だからこそだ。岐阜が陥ちればというのだ。
「この城が最大で最後の砦になる」
「そうですな。あと最初に犬山城ですな」
「あの城も堅固にしておくか」
「それがよいかと」
「武田が来れば美濃が最初に攻められる」
織田家の今の拠点であるこの国がだというのだ。
「暫くは武田も手に入れた国を治める為動かぬがな」
「それは当家と同じですな」
「武田はとにかく戦が強いがな」
しかしだというのだった。
「戦よりも政に興味があるからのう」
「それは殿と同じですな」
羽柴がここで信長にまた言ってきた。明るく囃しにさえ聞こえる声で。
「まず政というのは」
「うむ。武田、それに北条に毛利もじゃが」
ここでは上杉は入らなかった。
「まずは政を執るから
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ