第百五話 岐阜に戻りその九
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「戦は朝倉との戦だけではないからな」
「浅井殿は中立ということですね」
「猿夜叉もわかっておる。そして浅井家の者達もな」
浅井家の家臣達という意味の言葉だった。今のは。
「それではな」
「浅井家自体が動きませんか」
「間違いなくそうなる」
信長は浅井家を長政が主で絶対的に治めていると思っていた。これは彼が主になった経緯等から考えることだった。
そして帰蝶もそう考えていた。それで今こう二人で話すのだった。
「猿夜叉殿はその戦だけのご辛抱ですね」
「そうなるな」
「お辛いことですが」
「しかし無駄な血は流さぬつもりじゃ」
それは最初から考えてなかった。それが信長なのだ。
「断じてな」
「では朝倉家もですか」
「殺すつもりはない」
あくまで最悪の場合は出家させて終わらせるつもりなのだ。これまでの今川義元や三好三人衆への対応のままだ。
「無論民も害さぬ」
「降ってきた兵達もですね」
「織田軍に組み入れていく」
兵達もだった。信長は害するつもりはなかった。
「そうしていくだけじゃ」
「そうされていきますか」
「そうじゃ。まあ全ては避けられぬが」
それでもだというのだ。
「血は出来る限りな」
「流さぬにですね」
「政を進めたい。一つずつな」
その中に新田開発や堤や道の整え、そして関所の廃止や楽市楽座、町の拡充、檀家制度の導入があった。検地もまた然りだ。
こうした政から信長は天下を大きく変えようとしている。だが、だった。
「しかしそれを阻む者がおれば」
「戦を以てしてもですか」
「どけねばならんしな」
それにだった。
「戦はその為にする」
「最後の手としてですね」
「最後の手なら勝たねばならん」
戦国の世だ。やはり戦はどうしても起こる。そしてやるからには勝たなければならない。しかし信長はそれと共にこうも考えていた。
「しかし勝敗は戦の常じゃ」
「敗れることもありますね」
「敗れた場合のことも考えてじゃ」
「戦はするものですか」
「そう考えている。桶狭間でもじゃ」
あの乾坤一擲の戦でもどうだったかというのだ。
「二千の兵で攻めたな」
「はい、雨の中に」
「必ず勝てると思っておった」
今川の軍勢があの場所に止まることも雨が降ることも既に読んでいた。そして油断していることも全てだ。
だからこそ戦を挑んだ。しかしだというのだ。
「万が一の時も考えておったわ」
「桶狭間で上手くいかなかった時ですか」
「その時に爺に軍勢を預けておったのじゃ」
あれは若しもの時の備えでもあったのだ。あえて主力を美濃との境に置き今川の油断を誘っただけではなかったのだ。
「その時にすぐに盛り返せる様にじゃ」
「あの兵で以てですか」
「うむ、手筈は整えておった
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