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戦国異伝
第百五話 岐阜に戻りその八
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「その時に宗滴殿がおるかどうかじゃな」
「おられれば」
「その時は激しい戦になる」
 宗滴の采配によりそうなるというのだ。長い間朝倉の主将として戦い負けを知らぬ彼が相手ならばそうなるというのだ。
「幾ら兵がおってもな」
「そう容易には」
「勝てぬ」
 間違いなくそうなるというのだ。
「そうなる。しかしじゃ」
「それでもですか」
「宗滴殿がいなければ」
 その時についても話をする。やはり宗滴の存在如何の朝倉家なのだ。
「造作もない」
「それこそ即座にですね」
「越前に攻め込みそれで終わりじゃ」
 まさに一蹴できるというのだ。
「朝倉は二万、こちらは十九万じゃしな」
「兵だけでも圧倒的ですね」
「しかも朝倉には宗滴以外これといった将はおらぬ」
 これが朝倉の弱みだった。全てにおいて宗滴に頼りきっているのだ。
 だからこそ宗滴がいなければだ。朝倉家はだというのだ。
「一乗谷まですぐじゃ」
「そしてその一乗谷の城も攻め落とし」
「終わりじゃ。造作もない相手じゃ」
「ですか。やはり」
「その場合はな。まあ朝倉との戦があるにしても当分先じゃ」
 そもそも信長はさしあたって戦をするつもりは当分なかった。とにかく今は急激に大きくなった領土を治めることだった。
 だから戦は先だとだ。信長は言うのだ。
「朝倉とは若狭で接しておるがな」
「それでもですね」
「向こうから攻めてくることはない」
 信長はこのことは確信していた。絶対にだというのだ。
「若狭にも兵は置いてあるしな」
「しかも若狭はですね」
「山ばかりの国で入ること自体が難しい」
 そうした国だというのだ。若狭は。
 そうした攻めにくい国で既に兵も置いている。だからだというのだ。
「そうした国に兵を置けばな」
「まず攻めてはきませんか」
「こちらから攻めることもできんがな」
 逆に言えばそれもできないことだった。若狭からは。
「攻めるとすれば近江からじゃ」
「近江といえばそもそも」
「そうじゃ。浅井とのことがある」
 朝倉家と浅井家は浅井家の初代亮政の代から深い関係にある。それでなのだ。
「浅井家に前以て言っておかねばな」
「朝倉家との戦の時は」
「そうせねばならんな。いや」
「いやとは?」
「織田と朝倉の仲は既によく知られておる」
 今も帰蝶に話した。これでまた知られた。
「それではじゃ」
「浅井家の方も御存知だと」
「そう思ってよいな。それではじゃ」
「断っておくこともありませんか」
「そもそもこちらは降ってくれればよいのじゃ」 
 戦にならずに済めばいい、信長の戦への考えはそうしたもので変わりがなかった。問題は朝倉なのだ。相手がどうかというのだ。
「相手がな」
「どうしてくるか次第ですね」
「あ
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