第百五話 岐阜に戻りその四
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「しかし。やがてはじゃ」
「この岐阜からですか」
「義父殿には申し訳ないがな」
それでもだというのだ。その道三の墓前で。
「この岐阜からまた城を移す」
「その移す場所は」
帰蝶は信長の話を聞いてすぐに言った。その城は何処かというと。
「近江か摂津、しかも」
「わかるか」
「琵琶湖の南岸、そして石山の辺りですね」
「よくそこまでわかるのう」
「この二つの場所が実にいいからです」
帰蝶も知っているからだった。このことを。
「だからこう思ったのですが」
「見事じゃ。考えておるのは」
そこは何処かというと。
「その石山にじゃ」
「安土ですね」
「その二つじゃ」
信長は一つではなかった。二つの城を築こうと考えていた。それでこうその帰蝶に対して話したのである。
「摂津の方に第一の城を築くつもりじゃ」
「石山の辺りにですね」
「本願寺もよい場所に築いたわ」
信長は感心していた。あの場所に寺、実質的にはかなり堅固な城を築いた本願寺の先見の明に対して。
「あそこにおるとじゃ」
「そうおいそれとはですね」
「攻められんわ」
そうだというのだ。
「とてもな」
「本願寺と何かあれば」
「その石山御坊を攻めねばならんがな」
「とてもつもなく大きな寺ですね」
「横を通ったがな」
和泉に入った時代のことだ。
「そもそも摂津にあるのに和泉にまで出城が及ぶこと自体がじゃ」
「ないことですね」
「小田原城は知らぬが」
北条氏の拠点だ。やはり巨大な城として知られている。
「それでもあの寺はおそらくな」
「その小田原城に比肩しますか」
「話を聞く限りはそうじゃな」
そこまでの大きさだというのだ。
「小田原城は知らぬがな」
「ではその石山を攻め落とすとなると」
「小田原は十万でも陥ちぬ」
信長は話を聞く限りだがこう言った。
「その兵数でもな」
「では今の織田家の軍勢では」
「十九万の兵を動かせる」
四十万石で一万だ。それが七百六十万石ともなるとそこまでの塀を動かせる、織田家はそこまでの力を備える様になっていた。
しかしそれでもだとだ。信長は言うのだ。
「十万、動かせぬ訳でもないがのう」
「それでもですか」
「あの城は攻めて落とすと駄目じゃな」
ひいては石山御坊もだった。それは。
「人を攻めるべきじゃ」
「人をですか」
「人の心をな」
攻めるのはそこだというのだ。城ではないというのだ。
「城を攻めるのは下計じゃ」
「では人を攻めるのが上計ですね」
「そういうことじゃ。城を攻めても、特に小田原や石山の様な城はな」
「攻めてはなりませんか」
「悪戯に兵を失うだけじゃ」
例え勝ててもそうなるだけだというのだ。
「せぬに限る」
「だから人を攻
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ