第百三話 鬼若子その十六
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「これは」
「御主は慎重じゃからな」
「若し殿がその様なことをされれば」
山内の言葉はここで鋭いものになる。
「それがし。何としてもです」
「止めるか」
「はい、そうします」
信長に対してこう言ったのである。
「何としても」
「大将が自ら戦う様ではな」
「何かあってからでは手遅れです」
「辰之助の言う通りじゃ。しかしじゃ」
「しかしですか」
「時と場合によるわ」
大将が自ら戦わなくてはならない時があるというのだ。丁度今の元親がそうである様にである。
「そして今はじゃ」
「長曾我部はああするしかないというのですか」
「今あの軍勢の後詰を務められるのはあ奴しかおらん」
他ならぬ元親しかいないというのだ。
「軍勢を逃がし生きて帰られるのはな」
「生きてですか」
「そうじゃ。生きてじゃ」
元親に死ぬつもりはないということも指摘した信長だった。
「帰られるのはな」
「鬼若子だけですか」
「だからこそああして後詰を務めておるのじゃ」
「軍勢を逃がし己も生きて帰る為に」
「ああしておるのじゃ。見事よのう」
信長は惚れ込んでいる顔で述べた。
「増々欲しくなったわ」
「鬼若子が」
「欲しい。欲しいからこそじゃ」
それ故にだと言ってだった。
「攻めよ。囲むのじゃ」
「囲めばそれで」
「潰れればそれまでじゃ」
信長の今の言葉は少し聞くと突き放している感じだった。
しかしそれと共に信長は言ってみせたのだった。この言葉を。
「鬼がここで潰れる筈もないがな」
「では囲んでも」
「観るぞ、鬼若子の戦を」
信長は目を輝かせて言った。それと共に采配を振るった。
その采配により織田の軍勢は己の軍勢の後詰を務める元親に襲い掛かった。しかしそれでもだった。
元親は自ら槍を振るい続けまさに鬼の如き戦いぶりで織田の兵達を寄せ付けない。槍は周囲に血煙を作っていた。
それと共に精兵達に指示を出し続け采配を見せる。その采配も見事であり軍勢としても織田家を寄せつけない。
それで軍勢の間隔が開いたその時にだ。元親は言った。
「今じゃ!」
「退きますか、我等も」
「今ここで」
「そうじゃ、退くぞ!」
まさにそうするというのだ。
「よいな、それではじゃ!」
「はい、それでは!」
「今から!」
織田の軍勢が怯み間を開けたその瞬間にだった。元親は己とその軍勢を一斉に退かせた。まさに一瞬の隙を衝いた。
そうして戦の場を去る。後に残ったのは織田の大軍だけだった。
戦としては信長が勝った。元親は逃げ去った。だがそれでもだった。
「長曾我部の軍勢はどうじゃ」
「はい、一万で十万以上の大軍に殴り込みましたが」
「兵を殆ど失っておりませぬ」
竹中と小寺が答える。
「兵は
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