第百三話 鬼若子その十四
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この戦力差は圧倒的だ。幾ら長曾我部が善戦しても最後には負けるものだった。
「かつて項羽は三万で五十六万の劉邦軍を破ったがな」
「あの一敗地に塗れるという言葉ですか」
「あの戦ですな」
「確かに兵が多くとも敗れる時はある」
それも確かにあった。
「桶狭間の時と同じくな」
「しかしあれはあえて兵を美濃に向けて今川を油断させてのこと」
「あえて兵を少なくさせて攻めたものですが」
信長にしてみれば全ては策だった。そして義元はそれに乗ったのだ。
「確かに少兵で多兵を破る戦もあります」
「しかし今はですか」
「わしがさせぬわ」
その信長が言う。織田の青い軍勢は長曾我部の紫の軍勢を半月状に包んでいる。長可の騎馬隊は鶴の頭だった。
「ここで長曾我部が攻めてきてもじゃ」
「それでもですか」
「ここは」
「そうじゃ。今度こそ完全に囲み潰す」
その一万の軍勢をだというのだ。
「そうしてやるわ」
「勝三が奴等とぶつかってからですな」
森が我が子の名前を出す。
「それからですな」
「勝三の騎馬隊の指揮は我家でも屈指じゃ」
それこそ柴田の次になる程だ。やはり攻めさせては柴田に勝る者は織田家には他にはいなかった。
「その勝三の攻め、どう受ける」
「それを見て、ですか」
「そのうえで」
「見極めさせてもらおう」
信長は不敵に笑っていた。その彼の目の前で。
長曾我部の軍勢は長可の軍勢が投げる槍を散って左右に動いてかわす。元親はその彼等の動きを見ながら告げた。
「来るぞ」
「騎馬隊がですか」
「衝突してきますか」
「もう一度槍を前に出すのじゃ」
元親は己の家臣達にまた告げる。
「よいな。そうせよ」
「槍ですか」
「馬に槍で対しますか」
「そうじゃ。奴等は既に槍を使った」
先程投げて使っている。
「では後はじゃ」
「弓、若しくは剣」
「その二つですか」
「まさか鉄砲なぞ使うまい」
騎馬鉄砲隊だ。確かにそれはなかった。
「そんなものは流石にないわ」
「騎馬鉄砲隊ですか」
「そんなものがあれば恐ろしいですな」
長曾我部の者達はまだ知らなかった。みちのくのことは。
「馬の速さと鉄砲の凄さが重なれば」
「それは最早無敵ですな」
「うむ。それはまさに最強の戦じゃ」
元親もく言う。
「それはあまりにも強い兵になろう」
「しかし織田にそれはない」
「騎馬隊の武器といえば」
「刀じゃ」
槍がなければそれしかなかった。
「相当楽になるわ」
「ですな、刀は槍に比べて短いです」
「それならばじゃ」
どうかと言う元親だった。
「槍を前に出せばじゃ」
「馬を退かせられる」
「それが可能ですか」
「狙っておる」
実際にそうだというのだ。
「少し前に出
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