第百三話 鬼若子その五
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「終わるからのう」
「長曾我部元親の心を」
「鬼若子の力も天下に必要じゃ」
信長はこうも言う。
「是非共な」
「といいますと兄上はまさか」
信行は兄の言葉から彼の真意を知って述べた。
「あの者もまた」
「命を奪うとは一言も言っておらぬ」
「家臣とされますか」
「優れた者は誰でも家臣にしたくなる」
信長の本音だった。偽らざる。
そのうえで雪斎や竹中、三人衆や小寺を見て言うのだった。
「そう、誰でもな」
「尾張の者でなくとも」
「力があればですか」
「用いる」
実際にそうしていることだった。信長自身が。
「そしてそれは長曾我部も同じということじゃ」
「織田家に迎え入れられますか」
「是非共」
「欲しい」
信長はこうも言った。
「あの者がな」
「それ故に心をですか」
「あ奴の心を完全にわしに向けさせる」
まるで惚れた女を手に入れる様にだ。信長は言う。
「そうするのじゃ」
「ううむ。兄上らしいですな」
信行は兄の言葉をここまで聞いて唸る。
「そうお考えとは」
「わしらしいか」
「はい」
その通りだというのだ。
「それも実に」
「そうであるか。わしらしいか」
「そう思います。そしてですか」
「土佐も手に入れてじゃ」
国の話にもなる。
「四国のうちの三国も治めようぞ。暫し政に専念したい」
「どれだけでしょうか」
その政に専念する期間については松井が問うた。
「今の領地はかなり広く整えるにはそれなりの歳月がかかると存じますが」
「六年程じゃな」
まずはそれだけだというのだ。
「六年でかなり整えたい」
「六年ですか」
「その六年の間は政に銭を使う」
銭の話にもなる。
「城はやがては移したいがのう」
「今のところは岐阜ですか」
「武田のこともある」
全ての国を治めるにはより中央にいたいがそれでもだというのだ。新たな城を築く銭もなければ脅威もあるというのだ。
「そううかうかとはのう」
「移れませぬな」
「だから今はよい」
城のことはというのだ。
「岐阜におりそこからじゃ」
「政を為されますか」
「そうするとしようぞ」
これからのこともこうして話すのだった。
そして今度はだった。信長は居並ぶ家臣達を見回してからだった。
丹羽にだ。こう命じた。
「五郎左、御主は中央じゃ」
「中央の兵をですか」
「御主が率いよ」
まずは彼だった。
「向こうが来ればじゃ」
「反撃ですな」
「槍で奴等を寄せ付けぬ様にせよ」
「畏まりました」
「我等の長槍はそうおいそれとは抜けぬ」
この槍もまた織田家の武器だった。
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