第十話 信行の異変その二
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「ならば当然のことではないのか」
「はい、それは」
「城の主として」
「ではよい」
その言葉でまた言った。
「その用意をせよ」
「・・・・・・わかりました」
「それでは」
家臣達は無念を押し殺した声で応えた。そうしてだった。
早速その用意が為されようとしていた。しかしであった。
ここでだ。伝令が来たのであった。
「殿、宜しいでしょうか」
「何用じゃ」
「弾正殿からです」
こう言ってきたのである。
「使者が来ておりますが」
「使者だと」
「はい、島田殿です」
彼だというのだ。
「あの方が来ております」
「島田か」
信清も彼のことは知っていた。信長の家臣の中で主に内外の政にあたっている者の一人である。それでふとその名前に顔を向けたのである。
「あの者が来るというのか」
「はい、どうされますか」
「言われることはわかっておる」
既に覚悟を決めているからこそだ。こう述べる彼であった。
「さすればじゃ。向こうからも話を聞くとしよう」
「それでは」
「うむ、会おう」
その伝令の言葉に頷くのだった。
「さすればな」
「それでは」
こうしてだった。信清は島田と会った。島田は彼の前に座して礼をしてからだ。そうしてそのうえで彼に対してこう言ってきたのである。
「何、城を出よというのか」
「はい、そして尾張からもです」
「出よというのか」
「そのうえで山城の寺にでも入られれば」
つまり出家を薦めているのである。
「それが我が殿の御考えです」
「清洲の時と同じくか」
「そして岩倉とです」
その城ともというのだった。
「同じです」
「では伊勢守もか」
「既に剃髪され尾張を出ようとされる頃かと」
「速いな」
「その場合御家族に危害は及びません」
島田はここで一つ餌を出してきた。
「そして城内の家臣団は全て信長様が召抱えられ」
「足軽達もだな」
「無論です。一切命は奪わぬとのことです」
「わし一人が出家すればか」
「それで済みます」
そうだというのである。
「それでどうされますか」
「わかった」
それを聞いてだ。頷く信清らであった。
「切腹せずともそれで済むのならばな」
「それでは」
「うむ、わしは出家する」
信清は島田の言葉を正式に受けた。
「そして尾張を出る」
「さすればその様に」
こうしてだった。信清は出家し尾張を出ることになったのであった。そうしてそのうえでだった。信長は遂に信清の勢力も下しだった。果たしたことは。
「殿、これでです」
「尾張は統一されました」
「殿の手で」
家臣達が口々に彼に話す。
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