第百二話 三人衆降るその二
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そしてそのうえでだ。彼は三人衆にこう言ったのである。
「わしはまだ戦うぞ」
「いや、もう戦は終わりじゃぞ」
「わし等は降るのじゃぞ」
「ならばな」
三人衆は怪訝な顔になってだ。そのうえでまだ戦をしようとする龍興に対して難しい顔でこう言ったのである。
「御主も降られよ」
「後は隠棲するなりしてはどうじゃ」
「これから食えるだけの蓄えがあろう」
「僧侶になるのもよい」
「茶でもやって生きられよ」
「これからはな」
彼等は彼等なりの親切で述べた。だが。
龍興にそれが受けられる筈もなかった。それでだ。
彼はその目をさらに怒らせて三人衆にこう返した。
「ではわしはここから去る」
「去ってどうするのじゃ」
「行く宛はあるのか」
「当家の他に何処がある」
「それはこれから探す」
三好が織田に降ってもだ。それでもだというのだ。
「織田と戦う家をな」
「しかし織田は最早天下第一の家ぞ」
「我等も降り四国にも国を持つことになる」
「その織田家とまだ戦をするのか」
「わしは諦めぬ」
決してという口調だった。
「例え何があろうともな」
「美濃を取り戻すか」
「そうするというか」
「そうじゃ。わしはやるわ」
龍興の目は死んでいなかった。そうしてだった。
彼は降ることを決めた三人衆にこう言ったのだった。
「絶対にな」
「美濃か。失ったことには同情するが」
「念も強ければ毒になるぞ」
「そして己を害するぞ」
「毒であっても飲み干してくれるわ」
こう言うのが今の龍興だtった。口調も強い。
「それだけのことじゃ」
「左様か。あくまで進むか」
「では戦うがいい。わし等は止めぬ」
「全くな」
「では縁があればまた会おう」
こう言ってだ。そうしてだった。
龍興は三人衆と別れ讃岐から姿を消した。彼が何処に向かったのかは今は誰も知らなかった。煙の様に消え去っていた。
三好の水軍を破った織田軍は讃岐に上がった。するとその時からすぐにだった。
三好家の家臣達や讃岐の国人達が次々と降ってきた。織田軍はその数をさらに多くしながら三好家の十河城に向かう。
その途中でだ。信長に対して明智が言ってきた。彼もまた従軍していたのだ。
「信長殿、宜しいでしょうか」
「何か」
「はい、讃岐はこのまま手中に収められます」
これはもう間違いないというのだ。
だがここでだ。明智は信長にこう言ったのである。
「ですが阿波は」
「あの国か」
「阿波は三好家が降れば織田家のものとなります」
「まさにそうなるな」
「それもまた決まった様なもの。ですが」
それでもだとだ。ここで明智はさらに言った。
「今この時をぬって」
「阿波を取ろうという者がおるか」
「そうかと。そしてそれ
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