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戦国異伝
第百一話 海での戦その十一

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「このことについては。どう思うか」
「三好が最後の戦を挑んでくるかですか」
「うむ、どうしてくると思う」
「三好との戦はないでしょう」
 これが竹中の見立てだった。彼は強い光をその目から放ってそのうえでこう主に述べた。そしてそれからこう言ったのだった。
「四国にあがられたら三好には為す術がありませぬ」
「それで終わりじゃな」
「既に水軍を破っております」
 このことも大きかった。
「我等が四国にあがることを阻むことはできませぬ」
「それならば最早三好の命運は尽きておるな」
「そうかと」
 これこそが竹中の見立てだった。
「ただ。家の命運は尽きておりますが」
「それぞれの命はまだある」
「どうされますか?」
 竹中は信長のその顔を見て問うた。今度は見立てではなく本題だ。彼はそのことを信長に問うたのである。
 竹中のその問いにだ。信長はすぐに答えた。その返答は。
「向こうが下手に逆らわなければじゃ」
「それで、ですか」
「うむ、命を取るつもりはない」
 今川義元の時と同じくだ。そうするというのだ。
「六角でもそうたったがな」
「無闇に命は取りませぬか」
「歯向かうならば仕方がない」
 戦国の倣いでだ。そこは信長としても止むを得なかった。こちらが命を取るつもりはなくともそうせざるを得ない場合もあるのだ。
 信長もそのことはわかっている。だからここではこう言ったのである。
「三人衆が出家すればよい」
「それで宜しいですか」
「何も寺まで押し入らぬわ」
 武士と公家と寺社はそれぞれ違う世界になっている。信長は武士の立場から寺社にも目を光らせている。しかしそれもどうしても限度があるというのだ。
「そこに入って出ぬのならな」
「それで宜しいですか」
「うむ。これまでと同じじゃ」
 今川や六角の時とだというのだ。
「寺社に入ればよい」
「坊主ですか」
「坊主といっても様々じゃがな」
 延暦寺や本願寺の様な寺はあるがだ。その他にもだった。
「そうした大人しい坊主になってくれれば命までは欲しくないわ」
「それが宜しいかと」
「では讃岐に上がる」
 信長は前を見据えて述べた。
「今からな」
「はっ、それでは」
 こうした話をしてだ。信長も織田軍も讃岐に向かう。信長はいよいよ四国にも入りその領地を広げんとしていた。それは今からはじまろうとしていた。


第百一話   完


                          2012・7・27
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