GGO編
八十一話 墓参り
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父親とあまり仲が良くなかったのも、原因の一つだろう。
『今考えっと、無駄に強えぇ人だったんだよな……』
芯が太く、折れず、強かでしなやかで……何時も笑っていたような気がする。
美幸の母親である真理も「遥さんは本当に格好良くて綺麗な女性だった」と以前言っていた。
しかしそんな彼女の強い精神は、自分自身の肉体すら引き離してしまった。
彼女自身について行けなくなった体は溜まった疲労を爆発させ、そして余りにも……有る意味では彼女らしくあっさりと、涼人の母は逝ってしまった。
あの時、涼人には始め母が居なくなった事に今一実感が沸かなかった。
しかし通夜の後、それまで気丈に一粒の涙も見せずに葬式などで動き回っていた玲奈が、おばあちゃんの家の一番奥の部屋で涼人の体をしっかりと抱き締めながら大声を上げて泣いた時、確かに自分の母親は死んだのだと理解したのだ。
それ以来、年に一度必ずこの墓へ来ている。SAO内では、空に祈るだけで済ませたが……
「ちゃんと、帰って来たぜ。お袋……」
「…………」
自分はこの世界に帰って来た。
幾つもの刃と、爪と牙を潜り抜けて、帰って来たのだ。
「……来年は、姉貴も一緒だと良いんだがなぁ」
「そうだね……お姉ちゃんは何て?」
「『ホントにごめんね!母さんにも謝っといてお願い!じゃないと天罰が来そうな気がするのよ!』だとよ」
「あはは……」
苦笑しながら、祈りを終えた美幸が備え物のプリンを置く。ちなみに昨日もプリン。今日もプリンである。言うまでもなく、プリンが遥の好物だったからだ。
「うし、帰るか」
「もう良いの?りょう」
「いつまでも居たって仕方がねぇからな」
「……そっか」
二人は階段を下りはじめる。
元々来た裏口から墓地を出ると、小さな片側一車線の道路があり、それを渡ると住宅街だ。
この道を少し進んだ場所に、既に取り壊された涼人達が住んでいたアパートがあった場所と、彼らが幼少の多くの時を過ごした「おばあちゃんの家」がある。ちなみにそこに住んでいるのは、おじいちゃんとおばあちゃん。それにそこの孫娘の母親である、紀乃と言う女性だ。皆涼人達を温かく迎えてくれた。
二人並びながら、家々の間を歩いていると、不意に美幸が言った。
「ね、りょう」
「ん?」
「しーちゃんの事だけど……」
「あぁあいつな。東京の高校に居んだっけか」
「うん。おばあちゃんも、紀乃叔母さんも詳しい事は教えてくれないんだけど、何か有ったみたいで、わざわざ一人で暮らしてるみたいなの……」
しーちゃんと言うのは、涼人と美幸の幼なじみで3つ年下の少女だ。
本好きの物静かな少女で、二人にとっては共通の妹のよ
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