第百一話 海での戦その二
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「敵を捜すまでは同じじゃ」
「その敵を捜すことですが」
それはどうかとだ。池田勝正が言う。
「二郎殿がしておりますな」
「そうじゃな。水といえばな」
「あの御仁ですな」
「織田家は実に色々な者がおるわ」
柴田は腕を組み前を見て話す。目は始終動きそのうえで己自身も敵を捜すことは忘れてはいない彼だった。
「水軍を使える者もおる」
「そしてその色々な者がおるからこそ」
「強いのじゃ」
これが今の柴田の言葉だった。
「ここまでこれたわ」
「そしてこれからもですな」
「さて。三好の水軍と会えば破る」
柴田は言う。
「二郎にも考えがあるようじゃしわしもじゃ」
「権六殿もですか」
「お考えがありますか」
「うむ、ある」
確かな声でだ。柴田は前田と池田勝正に答えた。
「既にな」
「そうですか。それでは」
「戦になれば」
「その時じゃな」
柴田は不敵な笑みも見せた。やはり確かな声だった。
「わしのやり方を見せよう」
「しかし権六殿」
ここで前田が言ってきた。
「水の上では槍は」
「長槍はじゃな」
「使えまぬぞ」
陸の上とは違いだというのだ。鉄砲と並ぶ織田軍の武器がだ。
「それは」
「そして弓もですな」
池田勝正も言う。
「それもまた」
「迂闊に放ってもじゃな」
「壇ノ浦の頃から、いえ藤原純友の頃からです」
話はそこまで古くなる。平安の海賊の頃にだ。
「海の上で弓を使うのは」
「陸の様にはいかんな」
「使うことには使いますが」
「慣れが必要じゃな」
「舟は揺れます」
実際に今も揺れている。それではだった。
「我等では」
「辛いな」
「弓は放てますが」
「まず当たらん」
舟はそこそこ動かせているがそれだけだった。
「だからじゃ。弓もじゃ」
「なりませんか」
「下手に弓にこだわるのもいかん」
それもだというのだ。
「かえって敵に付け込まれるわ」
「確かに。そうすれば」
「それはせぬ」
弓は使わない。柴田は断言した。
「他のやり方があるわ」
「といいますと一体」
「何をされますか」
「二郎の考えはわかっておる」
前田と池田勝正にここから話す。
「そのうえで仕掛けるわ」
「敵が来ればですか」
「その時に」
「まあ来るじゃろうな」
そう見ていた。柴田は。
「そこで戦じゃ」
「ではその時に見せてもらいましょう」
前田は柴田に明るく返した。
「海での権六殿の戦を」
「わしもその戦を見せよう」
「中々楽しみです」
「そうか。しかし又左が慶次と共におらぬのは珍しいのう」
ここでこう言った柴田だった。
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