ALO編
七十九話 彼女のヒーロー
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うなんだ」
「何だよ。……不服か?」
「そんなこと無いよ!でも……ごめんね。また、私……」
迷惑をかけた。
なるべくなら、美幸は涼人と対等な立場に居たいと思っている。しかし、彼女の意思とは、無関係に、圧倒的な実力を持つ彼はいつも自分より前に居る。
挙句、こんな風に自分はいつも彼の足を引っ張ってばかりだ。これでは……
「どうでも良い事言いだしてんじゃねぇよ。ったく……」
不意に、彼女の頭に手が乗った。久しく味わっていなかった、大きく、包み込むような手の感触が、そこには有った。
「行ったろうが。危なくなったらいつでも助けてやるって、な。あれにゃ期限なんか定めてねぇんだよ。手前で言った約束、手前で守っただけだ。お前がどうこう言う問題じゃねぇよ」
「でも……」
「なら礼の一つでも言いやがれ。何だって目が覚めて早々の女に泣かれなきゃならねぇんだよ。気分悪くなんの知ってんだろうが」
そう言って口をとがらせるりょうの顔を見た途端に、湧き上がっていた涙は引っ込んだ。変わりに、精いっぱいに笑顔を浮かべる。
自分は、小さくしか笑えないけれど。それでも、精いっぱいの笑顔を。
「うん!りょう……ありがとう……!」
一瞬だけ、涼人は驚いたような顔をした。しかしそれは一瞬で、次の瞬間には、美幸が見たことも無いような、優しい微笑みを浮かべ……
「おうっ……無事で良かったな」
それが余りにも優しい顔で、自分でも気持が舞いあがってしまったのかも知れない。
頭から手が放された瞬間、良く考えもせずに、そんな言葉は口から出た。
「りょう……」
「?なんだよ」
普段の彼女なら、決して言いはしなかっただろうに──
「私……私ね……りょうの「あぁっ!?い、今は──!!」「麻野さん?検温です」ヒャウッ!!!?」
──残念。
初めは和人の声。次は看護婦の声だった。慌てて返すと、白衣の看護婦が中に入ってくる。
「おっ、検温か。んじゃま、ちゃんと受けろよ?俺らは離れてっからよ」
「あ……う、うん……」
少し名残惜しく思いながらも、彼女は離れて行く涼人を見る。
と、検温気を脇に挟んだ時、廊下の涼人達の会話が聞こえた。
『なんで廊下なんかに居たんだよお前ぇ』
『ん、あぁ。いや。なんかお話中っぽかったし……』
そうだ。そう言えば、自分はさっき何を……
「─────────ッ!!!!!!!?!?!?」
「さ、三十九度九分!?あ、麻野さん大丈夫ですか!!?」
かくして彼女は、アスナにとってのキリトのように、自分にとってのヒーローを、再認識するのだった。
思い届くはいつの日か────
Fifth story 《飛翔する救いの手》 完
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