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戦国異伝
第九十九話 都での戦いその九

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「猿、御主もじゃ」
「喋るなというのですな」
「そうじゃ。そうせよ」
 これが羽柴への言葉だった。
「さもないと厄介なことになりかねん」
「そうですな。では」
「うむ。しかしな」
 羽柴を見てだ。目だけで言った。
 それは彼に同意する目だ。見れば蜂須賀もだ。三人で見合って頷き合ってだった。
 目だけのやり取りを終えてだ。柴田は今度はこう言った。
「では行くぞ」
「はい、都に」
「そうしましょうぞ」
 こうした話をしてだった。織田家の者達は都に急ぐ。その道中とかく急いで飯を腹の中に入れていく。寝る間も惜しんでいた。
 そうして雪の道を進む中でだ。ふと軍勢の中で騒ぎが起こっていた。
 その騒ぎを聞きだ。信長は蒲生に問うた。
「何が起こっておる」
「あれは荷馬隊からですが」
「そうか。では見に行って来る」
 信長は蒲生の言葉を聞きすぐに頷いた。
「ではな」
「はい、それではですな」
「忠三郎、ここは任せた」
 本陣をだ。蒲生に任せてのことだった。
「少し荷馬隊のところに行って来る」
「お任せ下さい」
 蒲生は信長の命に率直に頷いた。その彼の見送りを受けてだ。
 信長は森と池田を連れて荷馬隊のところに来た。するとだ。
 足軽達が雪の中でお互いに言い合っていた。森はその彼等を見て信長に対してこんなことを言ったのである。
「何か荷物がどうとか言っておりますな」
「そうじゃな。騒ぎが酷くよく聞き取れぬがな」
「軽いとか重いとか」
「確かに言っておる」
 二人は首を傾げさせながら言った。そして池田はというと。
 その足軽達を見回したうえでだ。こう信長に言ったのである。
「このままでは斬り合いになりかねませぬ」
「そうじゃな。寒さのせいで気が立っておるわ」
「これは由々しき事態かと」
「わかっておる。それではじゃ」
「どうされますか」
「わしが言う。待つのじゃ」
 信長が声をかけるとそれだけでだ。足軽達は一旦動きを止めた。そしてだ。
 姿勢を正してだ。信長にこう話したのである。
「はい、こいつは荷物を軽く持ってるんですよ」
「いや、それはこいつです」 
 一人の足軽が同僚を指差して言うとその足軽もだった。
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