ALO編
七十八話 終劇
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が滑り落ちる
「ったく、何やってんだ」
「あ、サンキュ……」
それを拾い上げた、彼の物ではない男の手。鍵はまた、彼の下へと戻る。
扉がスッと小さな空気の音を残して開く。
扉を超えた向こうに、カーテンで仕切られた一角がある。その向こうにはジェルベットがあるはずだ。
これまで、あの仕切りを開けては、幾度となく打ちのめされて来た。その事実が、少年の足を一瞬だけ止める。
『ほら、待ってるよ』
声が、聞こえた気がした。
それは誰のものだったか……唯それと同時に自分の背を押した手が誰のものなのかは、間違えようも無かった
導かれるままに仕切りへと近づき、開いたそこには──
────
扉の向こうから、小さな嗚咽が聞こえる。
先程まで少年の歓喜の声だったそれは今は少女のそれとなって響いている。
ボタンを解放のままにしておくのもそろそろやめようと思い、ボタンを離すと、数秒後に扉が音も無く閉じた。
ふと、廊下の行き止まりにある、窓ガラスからから、大粒の雪がちらちらと舞っているのが見えた。
その奥に、一つの人影が見えた気がした。
灰色の浴衣姿に、手に持つ得物は青龍偃月刀。
とある世界に住むであろう。ある戦士の青年……
『よぉ、そっちはどうだよ?』
小さく、頭の中で問いかける。青年は何も言わずに二ヤリと笑うと、背を向けて飄々とした姿で去って行った。
それと同じく二ヤリと笑い、青年は何となく、天井を見上げる。
『ま、悪くなかった……』
その数秒後、廊下に砂袋を落としたような、鈍く小さな音が響いた。
────
「そうだ、兄貴も来てるから、今呼ぶよ」
「うん!」
気を使ってくれているのか、中々部屋に入ってこない涼人を呼ぼうと、和人は振り返る。扉は閉じていた。
「あれ……?」
内側から扉を開くが、廊下には誰もいない。
「兄貴〜?」
飲み物でも買いに行ったのだろうか?そう思い、外に出てようやく、それに気付いた。
人が居たそれ自体は正常だった。唯一つ……直立していない事を除けば。
廊下にうつ伏せに倒れたそれは紛れも無く──
「兄……貴?」
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