第九十九話 都での戦いその五
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「しかし幕府からもじゃ」
「人を送りそのうえで」
「援軍の要請ですな」
「急ぐのじゃ。余裕はないぞ」
義昭は幕臣達を急かす。
「よいな、ではじゃ」
「はい、それでは」
「明智殿にもお伝えします」
「細川殿と和田殿も」
こう義昭に話す。
「では今よりですな」
「総出でこの本国寺に篭りますか」
「今は」
「弓を出すのじゃ」
こうも言う義昭だった、
「そしてそのうえでじゃ」
「わかっております。それでは」
「我等が出ます」
「何を言う、わしもじゃ」
だが、だった。ここでだ。
義昭は強い声でだ。こう彼等に言ったのだった。
「わしも弓を持つぞ」
「?公方様もですか」
「戦われるのですか」
「無論じゃ」
義昭ははっきりと答えた。
「余は武家の棟梁じゃぞ。それならばじゃ」
「ご自身もですか」
「戦われますか」
「弓を持ってまいれ」
彼が使うのはそれだった。夢だった。
「よいな。それではじゃ」
「弓ですか」
「それをですか」
「兄上とは違う」
将軍であるがそれと共に比類なき剣豪でもあった兄とはそこが違った。彼は剣は兄には到底及ばなかった。
それでだ。こう言ったのである。
「では弓じゃ」
「それにされてですか」
「戦われますか」
「そうするぞ。ではよいな」
「はい、それではです」
「弓もお持ちします」
「当然具足もじゃ」
義昭はこうも述べた。
「着て戦うぞ。よいな」
「では今から具足も持ってきます」
「足利家伝来のものを」
「尊氏様が着けていたものを着るぞ」
「ではその具足も」
「今から持ってきますので」
こうしてだった。義昭は具足や弓の用意をさせた。そのうえでだ。
寺を完全に囲む三好の軍勢に向かうことになった。このほうはすぐにだった。
信長のもとにも伝わった。信長は家臣達と共に岐阜城において正月の料理を食べていた。味は京都よりも遥かに濃い。
その中の雑煮を食べながらだ。彼は言うのだった。
「餅はよいのう」
「そうですな。この食感がたまりませぬ」
「何といいますか」
他の家臣達もその雑煮を食べながら応える。
「しかも癖がありませぬ」
「幾らでも食べられます」
「そうじゃ。こうして汁の中に入れてもよい」
信長は雑煮の中の餅を箸に取った。そうしてだ。
それを口の中に入れつつだ。笑顔で言うのである。
「醤油をかけても餡子でもじゃ」
「辛くしても甘くしてもよい」
「そうだというのですな」
「そうじゃ。どっちも好きじゃ」
ここで餡子を忘れないのが信長だった。やはり彼は甘いものが好きなのだ。酒を飲めない分そうなのだ。
その彼がだ。こう言うのである。
「その餅を食える。よいことじゃ」
「では正月の間はです
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