第九十九話 都での戦いその四
[8]前話 [2]次話
頭を押さえながらも落ち着いている顔でだ。こう言ったのである。
「摂津か播磨か」
「どちらにも来てはおりませぬ」
「では和泉か」
四国と海を隔てて隣にあるだ。そうした国の名前が義昭の口から述べられていく。
「堺に攻め込んだのじゃな」
「いえ、ですから」
「そのどの国でもありませぬ」
「では何処じゃ。紀伊なら信長はまだ領土にしておらんぞ」
義昭は首を捻りながら言う。
「それでは何処じゃ」
「ですから。それは」
「言ってみよ、信長に伝えなくてはならん」
「山城です」
幕臣の一人が言った。
「そこに来ました」
「?山城?」
「はい、この国です」
「馬鹿を申せ。山城といえばじゃ」
どうかとだ。義昭は首を傾げさせながら述べていく。
「この国でうはないか」
「はい、この国です」
「そしてです」
幕臣達はさらに言ってくる。
「この都に来ています」
「既に門のところまで」
「?そんな訳がなかろう」
まだ言う義昭だった。今度はきょとんとした顔になっている。
「どうして讃岐や阿波からこの都まで一気に来るのじゃ」
「ですからそれは」
「おそらく川で」
「来れる筈がない。しかしどういうことじゃ」
「それがです」
「その来る筈がない者達がです」
まだ言う彼等だった。
「今実際に門のところまで来て」
「そのうえで」
「?まさか織田の者とか」
「はい、織田家の軍勢に向かっております」
「早速はじまろうとしております」
幕臣達がこう言ったところでだ。早速だった。
少し離れた場所から歓声が起こる。それを聞いてだ。
義昭もここで事態を把握した。それでこう言った。
「何と、まことであったか」
「はい、門のところは織田家の軍勢が守っておりますが」
「それでもです」
どうかというのだ。
「この本国寺にもです」
「間も無く来ます」
「何ということじゃ」
「それですぐにです」
「戦の用意を」
「他の者達はどうしておる」
ようやく事態を把握した義昭はこうも問うた。
「間も無くここに来るとなると」
「はい、既に具足を着ております」
「武具や剣の用意もしております」
「そうか。では余もじゃ」
義昭自身もだというのだ。
「すぐに出るぞ」
「はい、それではです」
「今より」
「戦の用意じゃ」
また言うのだった。既に酔いは醒めている。
「よいな。すぐに向かうぞ」
「では我等もまた」
「共に」
「信長に早馬を送れるのじゃ」
もう寝室から出てだ。義昭は彼と共に立ち上がった彼等に述べた。
「よいな、すぐにじゃ」
「はい、それではです」
「織田殿にも」
「既に都におる織田家の者が人をやっておろう」
この読みもだ。義昭は見せた。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ