第九十九話 都での戦いその二
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「皆存分に飲め」
「さすれば」
こうしてだ。幕臣達も酒を楽しみだした。無論馳走もだ。義昭は早速餅を頬張りだ。山海の珍味と能、それに酒を楽しみつつ言うのだった。
「よいのう。こうした正月はじゃ」
「はい、はじめてですな」
「まさに」
「将軍になるまで大変じゃった」
そのことを思い出しながらだ。義昭は言うのである。
「碌なものを食わん時もあったわ」
「ですな。雑穀なり何なりを食い」
「そうしてきましたな」
「そうじゃ。しかし今は違う」
その山海の珍味も味わいながらだ。義昭はさらに言う。
「こうして将軍になったからにはじゃ」
「からにはといいますと」
「こうしたものも食せる」
こう明智に言うのである。
「山海の珍味がのう」
「そうだというのですな」
「将軍ならばじゃ」
また言う義昭だった。
「こうしたものも幾らでも食せるな」
「それはその」
明智だけでない。細川に和田、他の幕臣達も義昭の今の言葉にはすぐにそれぞれ顔を見合わせてだ。無言になった。
しかし義昭はその彼等にだ。満面の笑みで言い続けるのだった。
「よいのう。これが将軍じゃ」
「将軍であると」
「山海の珍味を食せることが」
「美味い酒に能に狂言もじゃ」
義昭が挙げるのはそうしたものばかりだった。
「どれもよいのう」
「そうですか。それならそれでよいのですが」
細川は呆れるものを隠しながら義昭に述べた。
「して公方様、三好のことですが」
「四国に逃げ去ったのう」
「その彼等ですがどうやら」
「どうやら?何じゃ?」
「巻き返しを狙っているようです」
このことをだ。細川は義昭に話した。
「お気をつけを」
「ははは、大丈夫じゃ三好はな」
義昭は細川の言葉にそのおちょぼになっている口を大きく開かせて笑った。その上でこう彼に対して言ったのだった。
「四国じゃぞ。もう摂津や播磨にはおらんぞ」
「そして山城にもですか」
「全くおらんではないか」
こう言ったのである。
「それでどうして恐れることがある」
「そう仰いますか」
「うむ。確かに大和にはまだあ奴がおるがな」
松永についてはだ。顔を顰めさせて話はした。
「だがそれでもじゃ」
「三好についてはですか」
「そうじゃ。恐れることはない」
「しかしです。都に入るにはです」
細川はあえてだ。義昭にさらに述べた。
「色々と道がありますので」
「色々と?」
「jはい、ですから」
それ故にだというのだ。
「くれぐれもお気をつけを」
「何も心配いらぬと思うがな。それにじゃ」
義昭はここでもこんなことを言った。能天気なまでに明るく。
「都にも信長の兵がおるではないか」
「信行殿の兵がですか」
「そうじゃ。しかとおるではない
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