第九十九話 都での戦いその一
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第九十九話 都での戦い
義昭はこの時本国寺にいた。そこで明智達幕臣に言うのだった。
「元旦じゃがな」
「はい、おめでとうございます」
「めでたいのはよい」
それはいいというがだ。それでもだというのだ。
「しかしじゃ。どうものう」
「どうもとは?」
「馳走がないではないか」
義昭は口を尖らせて明智達に言っていく。
「全く。餅はないのか」
「はい、餅に馳走はです」
そうしたものはだとだ。明智は淡々と話していく。
「織田殿が用意して下さっています」
「おお、信長がか」
「はい、間も無く料理ができます」
「何と、そこまで用意しておるのか」
「そうして下さっています」
「信長は気が回る男じゃ」
このことにだ。義昭は目を細めさせて言うのだった。
「こうしたことまで考えておるとはのう」
「まさに山海の珍味が揃っております」
「まことか。そこまでか」
「はい、そうです。それに」
「それにとは」
「能も用意されていますので」
「狂言はあるか」
三代将軍義満のことも思い出してだ。義昭は問うた。
「それはどうじゃ」
「それも。幕府のことを考えられて」
「信長は何でも知っておるのう」
「音楽もありますので」
それも用意しているというのだ。
「元旦は楽しまれて欲しいとのことです」
「ではそうしようぞ。そういえば信長はじゃ」
「織田殿が何か」
「うむ。あの者は特に贅沢ではないのう」
「それなりに見事な暮らしはしておられますが」
だがそれでもだとだ。明智は義昭に話す。
「さして贅沢はです」
「しておらんか」
「食べるものも。焼き味噌はお好きですが」
「あれは贅沢じゃぞ」
金が落ちるとまで言われている。とかく贅沢なものとして知られている料理である。信長はそれが好きだというのである。
それでだ。義昭も言うのだった。
「そんなものを食しておるのか」
「そうされています」
「贅沢じゃのう。ではその山海の珍味も」
「かなりのものかと」
「そうなのか。まあとにかくじゃ」
「その馳走をですな」
「食しよう。酒もあるな」
義昭は酒の話もした。
「それもあるな」
「それは既に」
あるとだ。今度は和田が答える。
「織田殿がふんだんに用意されています」
「おお、また信長か」
「左様です」
「では飲もうぞ」
「我々や兵達のものも用意されています」
「それは随分と気前がよいな」
義昭にとってはこれで終わることだった。
「兵達にまで振舞うとはな」
「それもかなりの量をです」
「確か信長は酒を飲めぬが」
「しかし他の者が飲むということで」
それでだというのだ。
「用意して下さったのです」
「そうなのか」
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