ALO編
七十七話 Wrath
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つけられ、しっかりとした動きが出来ない。
「────ガグッ!!ギッ!!」
「ホレッ!そらよッ!!」
「ア……ガ……」
何度となく撃ちつけられ、ついに須郷は抵抗する力を無くした。幸いセダンの外面の鉄は薄く柔らかいため怪我はしないものの、何度も頭を揺り動かされ、視界がふらふらと定まらない。
「おっ、やっとおとなしくなったか。んじゃちょっと失礼して──」
『どうして自分がこんな目に?』そんな的外れことを考えながら、迫る銀色の光を見て、須郷の意識はそこで途絶えた。
────
「兄貴っ!!」
「…………」
ゆっくりと須郷の眼球にナイフを近付ける。涼人に、突然後ろから声がかかった。
「ん?どうしたよ、カズ」
「ど、どうしたって……須郷はもう気絶してる。後は縛って終わりだろ?」
「?なんで?」
「……え?」
涼人は本当に素朴な疑問の表情を、和人に向けた。その実が一瞬理解できず、こんどは和人の方が問い返してしまう。
その時、丁度和人と涼人の目があった。その瞬間、誰がそう説明したわけでもないのに、分かった。
──怒っている──
そう、涼人は今、かつて無いほどに、怒っていた。
普段、涼人は時折他人と衝突した時にイラつきを見せ、口調が荒くなる時がある。しかしそれは実際のところイラついているだけで、本当の意味で涼人が激怒しているところを、和人はまだ見た事が無かった。
そうして今日目にしたそれは──まるでヒトでは無いかのようだった。
どこがどうだと説明できるような、そんな物ではない。
ただ和人は眼前の青年の存在に、素朴に疑問を持っている。
“あれはなんだ?”
それが人であるのかすら、和人は一瞬だけ疑問に思えた。まるで眼前の殺す対象に興味を持っていないのだ。
そう、強いて言うならば、ただ目的に向かって振り下ろされる……
「刃《ジン》……」
「?話は終わりか?んじゃま、やりますかね」
そのまま須郷の眼前に構えたままだったナイフを、リョウは振り子のように腕をふるって一気にその眼球へと向かわせる。
キリトはその余りにも自然な動作に、一瞬だけ反応が遅れた。
「っ!?よせぇ!!!」
その手のナイフが、男の眼球に突き刺さり──
────
『──悪いに、きまってるでしょ!?』
────
「……!」
突如、涼人が纏っていた何かが消えた。
怒気でも無く、殺気でも無い。ただ涼人の周りに渦巻いていた「何か」が、はっきりと消えたのが、キリトには分かった。
涼人の手は、須郷の眼球にナイフが刺さる寸前で。
本当に、寸前で止まっていた。
「──あー、すまん。またやっちまったっつーか……悪ぃ。どうかしてた」
何となくバツが悪そうに頬を掻き振り返る涼人。こうして、ある
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