ALO編
七十七話 Wrath
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視界を巡らせる。ようやく目的の銀色の光を見つけた瞬間、須郷は奇声を上げてそれに飛びついた。
そしてそのまま、それを掴んだ──手に、強烈な痛みが駆け抜けた。
「ぎっ……ぁぁあああああああ!!?」
「…………」
須郷の手を、涼人が思い切り踏みつけていた。
こんなのは簡単な話だ。飛んでくる直葉の下着をキャッチするよりもたやすい。
上から見下ろす涼人の視線など、今の須郷には構っていられない。手を踏みつけ、持続的に痛みを与え続けるこの足をどかす方が優先だ。
しかしそれもやはり幸運だっただろう。何故なら──
「ギィィィィ!アギッ、ギッ……ギャッ!?」
と、涼人の足を持って思い切り叩いていた須郷の顔面が、またしても吹き飛ばされた。
後頭部を背後のセダンに強かにぶつけ、先程の鼻もずきずきと痛む。
顔面、後頭部、手首が同時に痛み、それが全身に回っているような錯覚すら覚えた。なおも痛みに悶絶する彼に、声が響く──
「あんたさぁ……人の脳みそに直接痛みぶち込む研究してたよな?」
突然何を言い出すのか。そう問う暇も無かった。再び髪を掴まれ、背後のセダンにまたしても思い切り頭を叩きつけられたからだ。
「気持ちは分かるよ……俺も実験は大事だと思うしな?だからよ……“次はお前だ”」
「は……?ギッ!?」
須郷が再び何かを言うよりも先に、再び彼の頭がセダンに叩きつけられる。
そして、うっすらと眼を開いた時、彼の視線の先に先ず初めに銀色の光が映った。先度まで自分のものだったはずの武器が、自分の瞳にまっすぐ切っ先を向けていたのだ。その鉄の重みを感じさせる恐ろしさに瞬間的に彼は体を逸らそうとしたが……
「ギッ!?」
「おいおい動くなよ……ほら、“目ん玉にナイフ付きこまれ”りゃ……痛みを直接脳にぶち込むって感覚も、分かるかもしんねぇだろ?」
「な、何を……ギガっ!?」
「だから動くなっつーの」
それはとても自然な声だった。
何の物怖じも無く、何の感情も無い。ただ知り合いと世間話をしているのと同じようなテンポで、彼は言葉をつづけた。
そして、彼は──それを見てしまった。
「さて、んじゃやろうぜ?」
此処までで、須郷は一度も涼人と目を合わせてはいなかった。それは、ある意味で幸運だったのかもしれない。何故なら──それを見た瞬間、彼は自らが死ぬ事を、理解してしまったから。
──突如、彼は声に出せない悲鳴を上げて必死にもがきだした。
「────────!」
「ははっ!生きが良いな!まぁけど……動くなっつの!」
「ギァッ!!」
殺される、殺される、コロサレル!!嫌だ、いやだイヤダ!!
恥も外聞も無かった。唯必死に自分の頭を掴む手から逃れようと必死に手足をばたつかせる。しかしそのたびに、二度。三度と頭がドアに叩き
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