第九十七話 都の邸宅その十一
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弟達を見てだ。こんなことを言ってきたのだ。
「あの者は嫌っておるな」
「あの者、松永弾正ですか」
「左様ですな」
「そうじゃ。御主達もあ奴は嫌っておるな」
「爺が言っていましたぞ」
信興が顔を顰めさせて長兄に話す。
「あの者ばかりは用いられてはならぬと」
「爺に毎日言われておるわ」
「やはりそうですか」
「斬るべしとも言っておる」
その織田家の筆頭家老であり忠義一徹の彼ならば当然言うことだった。彼もまた松永の悪名を知っていてそのうえで言っているのだ。
「即刻な」
「さもありなんですな」
「御主達も斬るべしと思っておるな」
「はい、その通りです」
「それがしもです」
信興だけでなく信包も答える。
「あの者だけはどうも」
「危険に過ぎます」
「何時寝首をかかれるかわかったものではありませぬぞ」
「国崩しですぞ」
お家乗っ取り、主家潰しをした者をこう言う。まさに松永の為にある言葉だった。
「それでどうして信じられるのか」
「それがしにはわかりませぬ」
「確かにそうしたことをしてきたがな」
信長もこのことを指摘する。
「あの者は」
「はい、その通りです」
「だからこそ申し上げるのです」
「あの者だけは用いてはなりませぬ」
「即刻追放にすべきか処刑すべきです」
やはり彼等も言うのだった。他の者達と同じく。
「あの者を見て笑顔なのは兄上だけです」
「それと猿だけですな」
「後は慶次位ではありませぬか?」
「家にも殆どおりませぬが」
二人以外には慶次もだった。天衣無縫の傾奇者は過去にはこだわらないのだ。
「それで何故ですか」
「用いられるのですか」
「あの者のことをわかっていながら」
「何故ですか」
「妙に潔いものや明るいものを感じるのじゃ」
松永とは最も縁遠い筈のだ。そうしたものをだというのだ。
「だからこそじゃ」
「用いられるのですか」
「あの者を」
「やはりそうする」
「兄上がそう仰るならと申し上げたいですが」
「今回ばかりは」
弟達の返事はこうしたものだった。
「相手が相手でございます」
「蠍は危険に過ぎます」
「どうしても信じられぬか」
こう笑顔で返す信長だった。
「あの者だけは」
「ですから。あれだけ怪しいと」
「しかもあれだけの悪事を重ねておりますと」
「何時寝首をかかれるかわかったものではありませぬぞ」
「実際に過去そうしたことをしております」
とにかく彼の過去は誰もが知っていた。それでだ。
弟達も言う。やはり松永は信長の弟達にも信頼されていない。信じているのは信長と秀吉、それに慶次位だった。その信長が言うのである。
「気長に見ればわかるであろう」
「そうであればいいのですが」
「まことに」
弟
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