ALO編
七十六話 断ち切られる絶望
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屋に灯りは付いているが、人影はなく、どことなく恐ろしげな雰囲気も感じさせていた。
正門はと言うと、高度医療専門の機関であるため急患の受け付けはしておらず、この時間になると既に門は堅く閉ざされている。和人と涼人は駐車場の方まで進むと、職員用に開放されている小さな門から中に入った。
「これ、不法侵入じゃね?」
「状況が状況だし……多分なんとか許してもらえるさ」
「ついに俺も犯罪者か……」
「嫌な言い方するなぁ……」
降り続く雪の中、息を白くしながらも軽口をたたき、駐車場の端に自転車を止める。
和人は自転車から降りるや否や、小走り気味に受付の方へと歩き出した。
「はぁ……やれやれ」
気持ちは分かるので、涼人も続く。和人のすぐ後ろについて走って行き、駐車スペースを一つ分開けて止まっていた白いセダンと黒のバンの間を抜けようとした時だった。
バンの後ろからキリトの前に人影が現れ、和人が慌てて止まる。次の瞬間。
「ちょっ……待てコラ!?」
「え、うわっ!?」
涼人は思い切り和人の首根っこをひっつかみ、後ろに引き倒した。和人の前にいる男の手に、銀色に光る物が見えたからだ。そんなはずはないのに、涼人はその光に、リョウコウであったの時に何度も感じた、人を殺す重さを感じたのだ。
そしてその良そうに違わず、和人の方から、白い何かが舞った。一瞬なんだか理解できなかったそれは、和人の、ジャケットの断熱材だった。
「く……兄貴、何だ突然、っ!?」
「おーいおいおい……」
抗議の声を上げようとした和人が、目の前の人物に息をのむ。
涼人も、超展開過ぎて驚くしかなくなっていた。
「遅いよ君達……僕が風邪ひいちゃったらどうするんだよ……」
彼らの目の前には、黒いスーツに、大ぶりのサバイバルナイフを持った男が居た。
奇妙なほどに粘り気のある高い声を、最早囁くような音量で発し、髪が乱れ、髭の影が見える顔で此方を凝視している。メタルフレームの眼鏡の奥にあるその眼は異常で、右目が……そう、丁度キリトが突き刺したその位置にある瞳の瞳孔が、大きく開いた左眼と違い小さく収縮したままなのだ。
ネクタイを殆ど首に下げたままに成程ゆるくしたその姿は数日前に会った時とはだいぶ印象が違うが、それが誰であるかなど、考えるまでも無かった。
「す、須郷……」
その男が、そこにいた。
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