ALO編
七十六話 断ち切られる絶望
[5/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
バレだ。
「あ、ちょい待ち。……オイおっさん見てんだろ!」
「え……」
『やれやれ……矢張りその呼び方は変わらないのかな?』
リョウが虚空に向かって怒鳴った途端、空間から低い男の声が聞こえた。それはキリトも確かに聞き覚えのある、特徴的な声……
「ヒースクリフ……なのか?」
「じゃなきゃ誰だよ。この声が他に何人もいてたまるか」
『ふむ……リョウコウくん、しかし私がヒースクリフであると言うのは、実を言うと本質的には正しくないとも言えるのだがね』
「あん?」
『私はどちらかと言うと、茅場晶彦と言う人間の残滓に近い、いや。電子化した記憶の集合体と言うべきかな……』
「「…………」」
相も変わらず分かりにくい事を言うヒースクリフに呆れつつ、二人は黙る。
……先に口を開いたのは、リョウだった。
「んで?ID貸してくれた事は感謝してっけどよ。なんで貸してくれた?」
「え、んじゃ……」
「あぁ。このおっさん行き成りメールで自分のログインID送ってきやがってな。研究設備のシステムは先に抑えといたんだが、ゲームシステム上でも須郷の上位に立てたのは、正直このおっさんのお陰って所がでけぇんだよな。癪だけど」
リョウが先程の芸当を出来たのには、リョウの努力とヒースクリフの助力、二つが重なった結果だ。
キリトが天凱を突破した後、自宅へと戻ったリョウはあらかじめ行っていたALOのシステムから須郷のパソコンや研究用サーバ等への侵入を続行、研究のシステムを止めていた所、キリト達のアドレスがロックされている事に、ユイの動向から気づいた。
その後、救出の為に須郷の制御していたあの空間に電子的に侵入。しかしALO内でトップの権限を持つIDであるオベイロンの攻略出来ず、攻めあぐねていたところに、茅場からヒースクリフのIDを貸し与えられ、スーパーバイザー権限の変更などのコマンドを行使。先程の状況に至ったわけである。
『何故、と問う辺り、君とは話がし易いと感じるところだ。今回の事に対する代償は、難しい頼みでは無いよ。君に……君達にこれを渡したくてね』
茅場の声がそう言うと、上から銀色に輝くの小さな丸い何かが落ちてきた。それを、キリトが手で受け止める。……小さな卵型の結晶のような物。中心部が、かすかに瞬いているのが分かる。
「何だ?これ」
『世界の種子だ』
「世界の……種子……?」
キリトとリョウが訪ねるように首をかしげるのをよそに、茅場は話を続ける。
『それがどういう物かは、芽吹けば分かるだろう。その後の判断は君達兄弟に任せるよ。消去し、忘れてくれても構わない。しかし、もし君達があの世界に、憎しみ以外の感情を残しているのならば──』
そこでいったん、声は途切れた。次に来たのは、そっけない挨拶の一言。
『では、私はそろそろ行
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ