第九十六話 鬼門と裏鬼門その十四
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そしてそれに加えてだった。伊勢神宮にはあることはあった。それはというと。
「式念遷都宮じゃ」
「何でしょうか、それは」
「わしもこの前はじめて聞いたがな」
この前置きからだ。信長は帰蝶に話す。
「伊勢神宮では二十年ごとに社殿を移し替えるのじゃ」
「そうしたことをするのですか」
「それが長い間。三百年程じゃ」
捨て置かれていたというのだ。
「それをどうかしようとな。神主の一人に言われてじゃ」
「それでなのですね」
「そうしたことは絶えてはならぬ」
決してそうしたことをないがしろにはしない信長だった。こうした一面もあるのだ。
「それでじゃ。銭を出すことにしたのじゃ」
「それはどれだけでしょうか」
「向こうは千貫を頼んできたが三千貫出した」
「何と、三千もですか」
これが多いことは言うまでもない。少なくとも帰蝶は思わず声をあげてしまった。
「それ程出されるのですか」
「こうしたことは考えているよりも金が多くかかるからのう」
それでそこまで出したとだ。信長は答える。
「それでなのじゃ」
「三千貫ですか」
「足らなければ幾らでも出すとも伝えておいた」
三千で足りなければだ。さらに言っていいというのだ。
「岐阜に言ってこいとな」
「そこまで為されたのですか」
「出すべき時は出す」
またこうしたことを言う信長だった。
「それ故じゃ。ただ神社の方はな」
「それ程困ってはおられないですか」
「神社には元々荘園もないしのう」
そうしたものを持っている神社自体が少ないのだ。
「豪族になっておればなっているでじゃ」
「国人と同じくですね」
「うむ。その領地を検地して取り込めばよい」
「神社はそれで済みますね」
「存外楽じゃ」
彼等についてはそうだというのだ。織田家の領地の中には既にかなり大きな神社がとりわけ山城や大和を中心として多くあるがそれでもだった。
「神社。神の方は然程気にはならぬ」
「しかしですね」
「寺はそうはいかぬ」
信長は袖の下で腕を組み述べた。
「中々のう」
「やはりそうなりますか」
「延暦寺に本願寺もある。だが」
「だが?」
「大和の興福寺もじゃな」
この寺の名前をここで出したのだった。
「あの寺は実質大和を仕切っておるしのう」
「何とかしなければなりませんか」
「少し考えておる」
ここでだ。信長はその考えている顔で帰蝶に述べた。
「帝、朝廷の方とお話をしてみるわ」
「朝廷とですか」
「そうじゃ。考えがある」
こう言うのだった。
「それをやってみよう」
「といいますと」
「まあ今は考えておるだけじゃからな」
言わないというのだ。信長はここでは秘密でいることにした。
だが確かに考えてだ。こう言うのであった。
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