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戦国異伝
第九十六話 鬼門と裏鬼門その十三

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 それが彼の場合は学問だ。それで言うのだった。
「それがしまことに学問のことは」
「でしたな。ではです」
「それではですか」
「この話はこれで終わりとしましょう」
「左様でございますか」
 こうした話をだ。松永は羽柴にした。そしてだ。
 そうした話の中でもだ。雪斎は他の織田家の家臣達に話していた。
 彼は水を飲みながら、今は般若湯を飲まずにだ。こう話したのである。
「とにかく寺社をどうにかすることもです」
「政か」
「それもまた」
「相手は大名達だけではありませぬ」
 とにかく寺社をどうするか。それが肝要だというのだ。
「大名は下し国人達は取り込み」
「そして商人達も取り込める」
「しかしか」
「寺社、とりわけ延暦寺と本願寺は」
 何につけてもだ。この二つの寺はだというのだ。
「後々織田家にとって何があるかわかりませぬ」
「ううむ。何もなければよいが」
「全くじゃ」
 織田家の面々は新たな問題についても意識しだしていた。寺社のことが次第にだが徐々に強く意識されてきていた。そしてそれは信長も同じだ。
 帰蝶にだ。信長は岐阜城の庭で共に弓を操りながらだ。こんなことを言ったのだった。
「検地や楽市楽座で次第にじゃが確実にじゃ」
「国人を取り込みですね」
「堺をはじめとして商人達もそうしておる」
「独自の勢力の取り込みがですね」
「上手にいっておる。そして伊勢や大和でじゃ」
 ここで挙げるのはこの二国だった。
「大抵の寺社は従いだしておるな」
「伊勢神宮にはですね」
「寄進しておいた」
 皇室の祖神を祭るその社にだ。信長はそうしたのだ。
「一度出したがしかしな」
「必要とあればですね」
「うむ。金は幾らでも出す」
 そうするとだ。彼は言ったのである。
「こうしたことにこそ銭は使うものだからのう」
「ですか。それでは」
「それでよいな」
「よいかと」
 帰蝶は微笑んで信長のその考えに頷いてみせた。
「無駄に使うのは政としてはどうかと思います」
「その通りじゃ。幾らあっても無駄に使えばすぐに消える」
 信長はわかっていた。金のことをだ。
 だからこそだ。無駄には使わないが使うべき時にはだというのだ。
 そして伊勢神宮についてはだ。どうかというのだ。
「じゃが伊勢神宮は折角じゃ」
「復元にですね」
「かなり荒れておったからのう」
 これも戦乱のせいだ。とにかくあちこちがほったらかしにされて荒れていた。それをなおさなければならなかったのだ。
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