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SAO─戦士達の物語
ALO編
七十五話 届かなかった一歩
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「ごぉ〜〜!」
「須郷、貴様……貴様ァアァァァァァァァアァァ!!!」
キリトは絶叫するが、そんな物は当然届かない。

「よぉん!!」
「やめなさい!……やめてぇ!!」
アスナの悲痛な叫びも当然従う様子はなく……

「さぁん!!」
カウントは進む。

そうして、キリトは思う。
もう、思考を放棄してしまおうか。
所詮は幻想の世界だ。自分は勇者なんかでは無かった。
他人を退け、確かに他から見れば少しは強いだろう力を持って自己顕示欲を満たして満足し、しかし結局はID一つ圧倒する事も出来ない。残る物は悔恨と自己嫌悪だけ。それならいっそ、考える事もやめてしまった方が……

『逃げ出すか……?』

──違う、唯現実を認識するだけだ……

『なら屈服するってことか?俺のあこがれは、その先にあったのに?』

──何を言ってるんだ。結局はあの人だってシステムの力とは戦わなかった。

『でもそれに立ち向かった。それに、あの人がそれを見せつけられたからって屈服するか?』

──それは……でも、そんなこと言ったって俺はただのプレイヤー、相手はゲームマスターだ。

『それを理由にして逃げて、あの人に本当に近付けるのか?』

──もういいだろう。今此処にいない人の事を言っても仕方無いじゃないか。

『違う。何時も俺の目指す先にあの人はいたはずだろ。何時だって余裕そうに笑って……きっとこんな状況になってもあの人は』

──余裕かまして、切り抜ける。

『目指す場所はそこだろう?何時だってあの人はあこがれで……』

──あの人に……兄貴に届きたくて。

『俺達の目標はそこだ。まだ自分の足で動けるだろ?』

──まだ、目指して歩けるはずだろ……

『立てよ……』

──立て……

『──立て……立てよ!!』

「オッ……アアアアアアア!!!」
「っ!?」
「んん!?」
突如、キリトは立ち上がった。
背から剣が抜け、地面に金属の音を立てて落ちる。
須郷もアスナも、驚愕を隠せない。しかし先に須郷が余裕を取り戻した。

「おやおや、オブジェクトの場所を固定したんだけど、妙なバグが残ってるか。ったく運営チームの無能ども……まぁ良い」
須郷は再び、嘲笑する。

「カッコよく起き上がったとこ悪いけどね。もう手遅れだよ。手首の動き一つで、全て終わる。それに……キミ、それ以上動けないんじゃないの?」
「ぐ……オオオオォォオ!!!」
しかしそれを無視して、キリトは前に進もうともがく。立てたのだ。ならば、進めるはずだ!!

「チッ。仕方ない……さっさと終わらすか」
「っ!キリト君!!」
「やめろォォォォォ!!」
「やれやれ……遅いんだよゴキブリ君。じゃあね。152番……さんっ!
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