ALO編
七十五話 届かなかった一歩
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」
「おやぁ?気づいちゃったかな?」
そう言うと、須郷は再びウィンドウを操作する。そして一つのボタンをトンッとと叩くと、アスナとキリトの中間、そしてオベイロンの斜め上二メートルくらいの空間に、白い光が集まり始めた。
それは始めは唯の塊であり、徐々に……徐々に人の形を成していく……
「紹介しよう!本日の特別ゲスト、被検体No152!サチこと、麻野 美幸さんだ!!!」
「なっ……!?」
「あ、あぁ……」
キリトの目が驚愕に見開かれ、アスナがうめくような声を漏らす。
しかし考えてみれば当然だ。これまで聞かされた話を見て、いまだに眠っているサチが、一体何をされたかなど……
「須郷……貴っ様ァァァァァ!!!」
「ヒィハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハァ!!!」
キリトの絶叫と、須郷の笑い声が響く暗闇に、ユイのような、白い簡素な服(最早布だけにも見えたが)を纏い、目を閉じたままのサチが、姿を現した。
────
「サチ……サチ……!」
「おやおや小鳥ちゃん。そんなに必死にならなくても、声くらいなら直ぐに聞かせてあげるよ?」
「須郷、何をする気!?」
「ハッハァ。知りたいかな?では教えよう!彼女は実はある感情に対して凄まじい反応を示す優秀な実験体でねぇ。まぁもう十分にデータは取らせてもらったんだが、今も継続して実験を行っているんだ。さて、その感情は何だと思う?」
ニヤニヤと笑いながら聴きとして語る須郷に、キリトは答えの代わりに凄まじい形相で須郷を睨みつける。しかしアスナはと言うと、恐怖その物の顔を須郷から……サチから目を離せないでいた。
「正解は痛み。そして恐怖だよ学生諸君!彼女は本当に優秀な被検体だった。しかし、実は今日でその任を解いてあげようと思ってねぇ」
「え……!?」
アスナの目が見開かれ、須郷を見つめる。唯一の希望が、その目には宿っていた。しかし、彼女は最早半ば錯乱していたと言える。この男がそんな良心にあふれた行動をするはずがない事すら、その瞬間彼女は忘れていたのだから。
「彼女の意識レベルを引き上げ、この場で彼女を起こしてあげようと思うのさ。勿論、流し込んでいる痛みや恐怖はそのままにねぇ!!!」
「そんな……そんなことしたら」
「く……須郷ォォォ!!」
「当然!常人の耐えきれるレベルを遥かに超えるそれを受けた彼女は、一瞬でそれに耐えられるように脳を変えるだろう!!廃人か……運が良ければ狂人になれるかなぁ!!?異常事態の後に目覚めた人々の中に、一人くらい廃人が居ても特に問題はない……だろう!!?」
「やめなさい……やめなさい須郷!!」
アスナは涙を浮かべながら絶叫するが、そんな言葉も当然須郷の耳には入らない。彼はウィンドウを取り出し、指先を振り上げ悠々とカウントダウンを始めた。
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