第九十六話 鬼門と裏鬼門その八
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「できればですが」
「そういえば本願寺との戦はなかったな」
柴田がここでまた言う。
「わしはその頃伊賀におったのでよくは知らんが」
「はい、それは避けられました」
羽柴がその厳しい顔をいぶかしむものにさせた柴田に述べた。
「無効が矢銭を送ってくれまして」
「向こうが折れたということか」
「そう考えてよいかと」
「どうじゃろうな。このまま何もないままであればよいがな」
柴田は武一辺倒ではない。こうしたことを察するだけの資質もあるのだ。外見からは思いも寄らぬが彼もまた頭の動きはいいのだ。
だからだ。こう言うのだった。
「殿の政と奴等がかち合わなければよいがな」
「ううむ。言われてみれば」
「猿もそう思うか」
「殿の政は検地や楽市楽座で力を蓄えるものです」
それにより確かにだ。織田家はかなりの力を備えようとしている。これは紛れもない事実だ。
「本願寺も延暦寺もかなりの荘園や土地を持ち」
「しかも寺の前にはじゃな」
「はい、その宗の大きな寺にはそれぞれ門前町があります」
「独自に町を持っておるな」
「それは寺が店を開くことを許しております」
そうした寄り合いになっているのだ。そのまま寺の収入にもなっている。実は信長の楽市楽座は寺の門前町から人を取ることにもなっているのだ。
だからこそだとだ。羽柴も言うのだ。
「ですからそれは」
「織田家の政とはかち合うのじゃな」
「そうなるかと」
「検地もそうじゃしな」
「あれは国人だけでなく荘園にも及んでおります」
公卿のそれは室町以降守護大名に取られしかも応仁の乱で殆どなくなっている。だから公卿達も都落ちをしたりしているのだ。糧がないからだ。
従ってだ。信長の検地の最大の狙いは。
「寺社の荘園やその他の土地に」
「国人といえばわしじゃがな」
荒木が出る。摂津の国人である彼が。
「それはそれで構わんと思っておる」
「わしもじゃ」
尾張の国人である蜂須賀もだった。
「むしろ織田家の直臣となれば石高も増えていくしのう」
「そういうことじゃ。実は国人のままじゃとそれが限られておる」
所詮は小勢力に過ぎないというのだ。一国の。
しかし織田家に入ればどうか。彼等が言うのはこのことだった。
「万石取りの大名になることも夢ではないとなると」
「それではじゃ」
「ふむ。そうか」
羽柴が二人の話を聞いて述べる。
「それでなのじゃな。国人としてはか」
「むしろ織田家に入った方がよい」
「そうなるのじゃ」
「検地は国人も取り込むものですな」
今言ったのは秀長だ。その兄に似ず端整は趣の顔で述べる。
「その中で活かしますか」
「そうなるのじゃ」
「わし等にとっても家臣達にとっても有り難い」
国人達に仕える家臣達もより
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ