第九十六話 鬼門と裏鬼門その五
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「その二つがあります」
「では天の時は」
「さて」
本願寺の天の時になるとだった。明智は首を捻った。
そのうえでだった。こう言ったのである。
「それはどうも」
「そもそも本願寺は天下も望んでいませんな」
「天下とはまた別のものを見ております」
寺社が天下統一を目指すかというとそれはなかった。では何を目指すかというと。
「本願寺だけの国を作ろうとはするでしょうが」
「それが本願寺の目指すものですか」
「はい、それを目指すでしょう」
それが本願寺の目指すものだとだ。明智は見ていた。
「そしてそれが織田家と衝突するのなら」
「全面的な戦になりますか」
「それも派手な」
明智はまた述べた。
「近畿一体を巻き込んだ」
「東海もですな」
「そうなります」
「ううむ。そうならなければよいですが」
「それがしもそう思います」
明智はまた茶を煎れていた。そのうえでの話だった。
「何かが壊れてしまいかねません」
「何かが、ですか」
「それが何かはわかりませんが」
だがそれでもだ。何かと言ってだった。
明智は織田家と本願寺の戦が起こることは恐れていた。それは避けたいとだ。
そしてだ。こうも言った。
「あとは天台宗ですな」
「延暦寺ですか」
「はい、あの宗派もどうやら」
明智は延暦寺にもだった。危うさを見ていた。
「そしてどちらも御仏に仕えますが」
「?一体」
「どちらも妙に暗いものを感じます」
「暗いものとは」
「はい、闇でしょうか」
いぶかしみながらだ。明智は答えた。
「それを感じます」
「闇ですか」
「どの寺社も生臭さはあります」
このことは色々と言われているがだった。特に寺のそうした世俗、少し悪く言えば生臭さは根強かった。これは昔からのことだがだ。
特にだ。その二つの寺はだというのだ。
「しかし本願寺にも延暦寺にも何かそれとは別の闇を感じますので」
「それが気になりますか」
「そうです」
「言われてみるとどうも」
細川もだ。明智の話を受けてだった。ふとこう言ったのである。
「どちらにも何か感じますな」
「そうですな。おかしなことに」
「闇は本来寺社にはない筈ですが」
「はい、ですがそれでもです」
「隠れる場所ですからな」
細川は知っているのだ。寺社の一面を。それは何らかの事情で表に出られなくなった者が出家なりしてその中に匿ってもらうというものがあるのだ。
それを知っているからこそだ。彼は今言うのだった。
「では」
「はい、その可能性もありましょう」
「邪な者が入っていますか」
「そのことは否定できないと思います」
明智はこう見ていた。真の闇は知らなかった。この国の真の闇は。
それ故にそうした者達がいるやもと言った
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