第九十五話 大と小その九
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「そしてそれから焼いたり雑煮にしてじゃ」
「召し上がられますか」
「とにかく餅を」
「他にもあんこなりきな粉なりでな」
甘く食いもするというのだ。
「楽しみじゃ。あらゆる方法で食うぞ」
「では正月まではですな」
「政に専念されますか」
「とりあえずは」
「将軍らしいことをするか」
今度はこんなことを言うのだった。
「何かとのう。しかし」
「しかし?」
「しかしといいますと」
「いや、都もこの山城の国もじゃ」
都のあるこの国自体もだというのだ。
「どうも最近織田家によって細かく治められておるのう」
「そうですな。都の街並みを整えることもです」
「織田家がしております」
「山城の田畑や道や堤も」
「全てしていますか」
「これではわしのすることがない」
義昭は腕を組んでこう述べた。
「特にのう」
「いえ、それはかえってよいことです」
明智、幕府に戻っていた彼がこう義昭に言ってきた。
「むしろです」
「よいというのか」
「はい」
そうだとだ。明智は義昭に述べる。
「織田殿に任せられればです」
「都も山城の国も治まるか」
「そして天下も」
ひいてはだ。日本全体がだというのだ。
「そうなります」
「左様か。ではわしは何をすればよいのじゃ」
「ただ。ゆうるりと」
明智は頭を下げていた。そのうえでの言葉だった。
「御所でおられて役職のことなぞをお考えになられれば」
「大名達に授けるのじゃな」
「そうされればよいかと」
今更幕府に役職を受けてもどうということはなかった。管領なぞも最早名前だけの存在になっている。もっとも謙信は違う考えだが。
だからだ。明智も言ったのである。
「今は」
「ふむ。左様か」
「その通りです」
「ではじゃな」
義昭も上機嫌なまま明智の言葉を受けてだった。
そのうえで実際にそうすることにした。彼は将軍の仕事と思われること、実は最早形骸化してどうにもならないことについて専念することにしたのである。
しかしその中でもだ。彼の振る舞いはだった。
妙に感情的で気分屋だった。先程まで笑っていたかと思うよ。
急に甲高い声で怒鳴ったりもする。その彼を見てだった。
細川と和田は微妙な顔になった。そのうえで茶室で共に茶を飲む明智に言うのだった。
「どう思われます、公方様は」
「あの方のことは」
「そうですな」
明智が茶を煎れていた。茶器を静かに、だが丁寧に動かしながらだ。
彼は己の手の動きを見ながらこう二人に答えたのだった。
「義輝様と比べまして」
「落ち着きがない」
「そうだな」
「はい、ありませぬ」
こう答えるのだった。
「それがし。実はです」
「公方様は静かだと思っていた」
「左様ですか」
「そ
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