第九十五話 大と小その七
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「では。よいな」
「戦じゃな」
「そうするか。それではじゃ」
「今一度攻めるぞ」
長逸はまた二人に告げた。
「織田家をな」
「では堺じゃな」
「あの町からじゃな」
政康と友通はこう考えた。だが、だった。
三人と少し離れた場所に座っていた斉藤龍興がだ。こう言ってきたのだった。
「いやいや、それでは駄目ですぞ」
「駄目か」
「そう言うのか」
「そんなことは織田も読んでおります」
信長のことがわかっていた。痛い目に遭っているだけに。
「実際に堺には兵が入り守りも固めておりますぞ」
「むう、左様か」
「既に堺は固められておるか」
「では攻めれば危ういか」
今の三好家の問題は兵が少なかった。精々二万程度だ。織田家はそれに対して十五万だ。今の織田家との力の差は歴然としていた。
だからこそだ。下手なことは打てない、三人衆は龍興の話にまた難しい顔になった。
そのうえでだ。今度はこう言い合うのだった。
「では何処を攻める」
「摂津かそれとも播磨か」
「紀伊から入るか」
こうした話をする。しかしだった。
三人衆だけでは結論、よい攻める場所が見つからない。それでだった。
その三人で龍興にだ。こう問うたのだった。
「何かよい考えがあるか」
「ここはどうすべきじゃ」
「一体何処を攻めればよいのじゃ」
「そうですな。ここは思い切って」
龍興はにやりと笑った。そのうえで三人衆にある場所を告げた。その場所は。
「都はどうでしょうか」
「都!?」
「都とな」
「讃岐から都を攻めよというのか」
暗い部屋の中でその暗がりを照らす蝋燭の火が揺れる。その火の揺れで彼等の影も揺らぐ。影には命がないがそれでも揺らいだ。
「そうせよと」
「まさかと思うが」
「そのまさかでござる」
龍興の笑みは変わらない。その顔も。
「あえてそうしてみてはどうでしょうか」
「馬鹿な、そんなことができるものか」
「全くじゃ」
すぐにだ。三人衆はこう返した。
「この讃岐から都をなぞとは」
「そんなことができるものか」
「無謀にも程があるぞ」
「無謀であってこそではないですか」
龍興の言葉は揺るがない。見事なまでにだ。
そしてそのうえでだ。彼は三人衆に対してこうも告げたのだった。
「今更」
「今更。今の我等ならばか」
「最早賭けをするしかない」
「そう言うのか」
「そうでございます」
そしてその賭けをする理由がどうしてかもだ。龍興は三人衆にまた述べる。
「織田家との力の差は最早歴然です」
「十五万対二万じゃからのう」
「その気になればあと四万は普通に兵を集められるからのう」
「最早どうにもならぬわ」
それが今の織田家だった。その力は天下第一になっていた。
だがそ
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