第九十五話 大と小その五
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「町並をかつての様にされるとのことじゃ」
「応仁の乱以前の様にか」
「うむ、その様にな」
「そうか。殿はそうしたことも考えておられるか」
「そうらしいな」
「大きいのう」
万見は信長のその考えを知りこう述べた。
「そこまで為されるとはな」
「そして動かれることはじゃな」
「うむ、大きい」
こう言うのだった。
「殿は大器じゃ」
「尾張や美濃だけを御覧になられてはおらん」
矢部は灌漑の状況を見た。百姓達はきびきびと動いている。矢部は彼等がさぼることよりも怪我をしないことを警戒して監督をしていた。
そのうえでだ。こう万見に言うのだった。
「この近江にしてもじゃ」
「そうじゃな。我等をつかわしてな」
「こうして開墾等を進めておられる」
「今手に入れている国を全て治められると考えておられるな」
「うむ、そうじゃ」
それが信長の考えだというのだ。
「その通りじゃ」
「それは当然都も入り」
「他の国もじゃ」
信長が治めている全ての国がだというのだ。
「入っておるからのう」
「でかいのう。しかし殿はまだまだだと仰っているな」
「天下じゃ」
信長が見ているものはそれだった。
「天下全てをこの様に治められることじゃ」
「泰平にしそうしてか」
「天下を治める」
それをだ。見ているというのだ。
「その様に考えておるのじゃ」
「では我等は」
「このまま仕えるだけじゃ」
矢部の今の言葉は明るいものだった。
「そして天下泰平の務めにかかろうぞ」
「そうじゃな。そうするのがよい」
万見も頷く。そしてだった。
彼は働く百姓達を見ながらだ。こう矢部に告げた。
「そろそろいいのではないか」
「休憩か」
「うむ。日も高くなっておる」
万見は今度は顔を上げた。見るとだ。
実際に日が高くなっていた。それも見て矢部にまた告げた。
「それではな」
「休憩か」
「飯も炊けておろう」
まさにそうした時間だというのだ。
「ならよいな」
「うむ、ではな」
こう言ってだった。そうして。
彼等は百姓達を休ませた。そのうえでだ。
百姓達に飯を食わせる。白米をたらふくだ。その白米を食う百姓達のところに行ってそのうえで彼等に対して尋ねたのだった。
「どうじゃ。辛いか?」
「疲れはないか?」
「いえ、大丈夫です」
百姓達がその白米の握り飯を頬張りながら答えた。
「こうした美味いものも食わせてもらってますし」
「まだまだやれますよ」
「安心して下さい」
「ははは、ならいいがな」
矢部はその百姓達の言葉と屈託のない笑顔を見て彼も笑った。
そのうえでだ。彼等にこうも言うのだった。
「ではたらふく食うのじゃ」
「何と、白米をですか」
「たらふくですか」
「
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